[自動車]マツダ MX-30 EV MODEL 1dayモニター試乗体感 150kmほど走行レポート

マツダのサイトを見ていたら「MX-30 EV MODEL 1Dayモニター試乗体感」というのをやってる事に気づく。どうせ地元では対象外なんだろうと思って調べたら自宅からクルマで10分くらいのディーラーで取り扱ってる、マジか。募集要項を見たら条件を満たしている。こんな機会でもないとEVを長時間乗る機会なんて無さそう。よし応募したれ。

マツダ|MX-30 EV MODEL 1dayモニター試乗体感|ご購入サポート

数日してディーラーから「OKです、貸し出し時間は10:00~16:30になります」のお返事。「返却時には使用した分だけバッテリーを充電して下さい」とある、つまりは充電も体験出来る訳だ。調べたら結構あちこちにCHAdeMO充電器がある、これで30分くらい充電すれば大丈夫っぽい。日にちは第一希望の土曜日が取れた。どのくらい走れるか判らんけど小樽程度なら余裕で往復できそう。行こうと思ってた「小樽・札幌ゲーセン物語」展にはこいつで行くことにする。

当日にディーラーに移動。注意事項の書類にサインしたり話を聞いたり。この店での「1dayモニター試乗体感」の第一号らしい、マジか。さらに言うと用意された「MX-30 EV MODEL」はまだ走行距離が100kmとのバリバリの新車であった。いかんちょっと緊張してきた。

ロードスターをディーラーに鍵ごと預けて、MX-30に乗り込んでシート合わせ。とりあえず軽く運転してみる。普通に運転出来ますね。ただこの静かさとか滑らかさは普通ではない。ちょっと凄い。エンジンが存在しない事による「振動源が無い事のメリット」がなんとデカいことか。1㎞くらい走ってから適当な駐車場に入れてよく見てみる。グレードは最上位の「Highset」、まあ価格差を考えたらコレ一択だと思う。スタッドレスタイヤは残念だけど季節的に仕方がない。ちなみにFFモデルのみ。

外観上は小さな「ELECTRIC」シールとリアの「e-SKYACTIV」ロゴ以外マイルドハイブリッドモデルと見分けがつかない。マイルドハイブリッドモデルもリアのログは「e-SKYACTIV G」だから似てるし。

床下を覗くと確かに妙なでっぱり。これがバッテリーケースである。バッテリーは水冷構造のため長持ちするらしい、ちなみによく比較されるホンダeは空冷のみ。「デカいバッテリーを積んだらLCAが悪化する」という主張によりバッテリー容量は35.5kWhしかない。WLTCモードでの走行距離は256kmぽっちである。このバッテリーケースのせいで最低地上高が一気に180mmから130mmに下がってしまっている。ロードスターが140mmなのでそれより低い。冬に乗るなってことか。

メーターはマイルドハイブリッドモデルと同様「左右は物理メーター、真ん中は液晶メーター」という構成。右にバッテリー温度が付いてるのがちょっと面白い。左の「POWER」メーターの読み方が最初分からなかったのだが、左の青い部分に入ると回生が入っている状態。左に回るほど回生=バッテリー充電、右に回るほどパワーが出る=バッテリー負荷が高いという仕組み。慣れると分かりやすい。

さてバッテリー容量は現在98%となってるが、航続可能距離は218kmしかない。さらに空調をオンにすると一気に188kmに減る。マジか空調で一割持っていかれるのか。なんか心配なのと、そんなに寒くないので空調は切っておく。後で気づいたが空調オフでもシートヒーターとステアリングヒーターは使用可能。しかも航続距離は変わらない。シートヒーターは熱いくらいにめっちゃ効く。

にしても空調パネルがタッチパネルなのは本当意味が分からない。デザイナー曰く「ダイアルを付けたくなかった」というけども。使い勝手は悪くはないんだが運転中に操作したくない。センターコンソールも使い勝手は悪くないけど形が意味不明すぎる。アームレストの位置はすごい良いだけに惜しい。

ロードスターで使ってる音楽用USBメモリを刺して、さらにLightningケーブルも刺して手持ちのiPhoneを接続。クルマを始動してなくても充電されるんだコレ(多分ドアロックしたらOFF)。そして始動したら「CarPlay接続しますか?」と聞かれるので接続。地図アプリが自動で立ち上がるのでマイクアイコンを選択して行き先を音声入力すると一発認識。スマホナビの一番いいところって音声認識の精度だと思う。そして小樽まで移動開始。

それにしても静か、ロードノイズも抑えられててちょっとした高級車気分。乗り心地はいつものマツダ3/CX-30と基本同じだけど、車重が重たい&バッテリーを積むために車体剛性を上げているせいで最高とまでは行かないけど大分良くなってる。ステアリングはとても滑らか、特にSAT(コーナー立ち上がりでハンドルをまっすぐ戻す力)の出方が自然で素晴らしい、ロードスターより良いくらい。ロードスターは最後のまっすぐまで綺麗に戻り切らないのよな。

ブレーキを踏むとペダルから「ガリガリ…」という感触が来るのがちょっと気になる。これは回生ブレーキのせいだろうか。ブレーキ自体はコントローラブルだけど、このタッチもあってマツダ3/CX-30にはちょっと劣る。

動力性能は普通、EVというと「超絶レスポンスと踏んだ時の異様な加速感」ばっかし取り上げられるけど(これをエンターテイメントにして成功したのがテスラだと思ってる)、この「MX-30 EV MODEL」は「すごく良く出来たガソリン車」みたいな感じ。踏み込んでも唐突な加速はしない、人工的に作られたエンジンっぽい音ともになだらかに加速していく。体感的には2.5L~3LのNAくらいですかね。必要十分な程度には速いし怖くない。

アクセルレスポンスはとても良い。「すごく速い」という意味でなくて「自然かつ滑らか」という意味。ハーフスロットルからの加速の仕方は「理想的な内燃機関エンジン」みたいな感じで本当に気持ちいい。全てが過剰で無くてちょうど良い。

テスラとかのEVの全開加速って「バッテリーが一時的に出せる最大出力」を使ってるんだけど(当然その分バッテリーは減るし高出力は短時間しか出来ない)、そういうのを使ってない気はする。そもそも「全開にすると具合が悪くなる」くらいの猛烈な加速が必要かと言われたら「付いてたら一回試しに使ってみる」程度ではなかろうか。

ステアリングに小さめのパドルが付いてて、これで回生量を調整できる。上に二段階、下に二段階の切替が可能。下に切り替えてアクセルを離せばそこそこの減速Gが効いて、タウンスピードでの交差点前の減速はブレーキを使わずとも十分可能。新型ノートe-PowerのECOモードっぽい。逆に上にするとアクセルを離しても回生がかかりづらくなる、だけではなく実は「シフトアップしたみたいにクルマが前に出る」感覚がある。これが謎、一体どうやってるんだろう。良い感じだけど現在選択してる状態がメーターパネルにしか出ないのがちょっと残念。HUD側にも出して欲しい。

回生をきつめにしてアクセルを離せば結構ブレーキがかかるのに、ブレーキランプが光ってるかどうかわからないのは正直良くない。ハンドルの「INFO」ボタンを押すと液晶メーターの表示が変わって、車両を後方から見た絵もあるのでここで表示されるのかと思ったら何をやっても表示されてる車両にランプは点かなかった。新型レヴォーグも同様の表示があるんだけど、こっちは灯火類の点灯状態が表示状態に反映される。スバルの方が圧倒的に正しい。

ここからは素のMX-30に共通した部分。乗る前は「SUVクーペっぽい外観だけど着座位置はそんな高くないよな」と思ってたんだが(普段がロードスターなんでかなり麻痺しております)、思いのほか高くて見晴らしが非常に良い。CX-30と全然違わね?と思って調べたら全幅、全長は全く同じだけど全高は25mm違う。この25mmが効いてるんだろうか。CX-30は割と普通なんだけど。

ただし後方視界が絶望的。ドアミラーはデカくてよく見えるし、バックの時に自動的にちょっと下げる機構もついてて良い感じなんだが、ルームミラーは「ただでさえデカくないリアウィンドウの4割くらいがリアシートのヘッドレストに塞がれている」状況。後ろにクルマが来ても車種が分からないのは結構ストレス。このクルマで5人乗るというのはすごいレアケースだと思うので真ん中のヘッドレストは取り外した方が良さそう。リア左右のヘッドレストもコンパクトカーみたいに「使うときに引き出す方式」にしとけばいいと思うのだが。

ここまで後方視界がアレならカメラで撮影してモニタに映す「スマートミラー」を採用した方がいいのでは。ノートe-Powerの時はルームミラーまでの距離が近いのでピントが合わせづらい(年寄りですんで)というのが気になったけど、このクルマはルームミラーまでちょっと距離があるのでそこまで問題にならなさそう。

観音式ドアはやっぱり疑問。リアドアを開くにはフロントドアをかなり開く必要があって「駐車場で隣にクルマが居る状態」ではまず無理。開けた所で「ドアを閉める順番を間違えたらドアに傷が付く」という妙な不安感がある。実際にはまず間違えないだろうけど。そうなると後部座席に荷物を置いておくのも気軽に出来ないからトランクを使おうって話になるけど、パワーゲートの設定が無いのがまた致命的。兄弟車のCX-30にはパワーゲートの設定があるのに、デザイン上の問題でパワーゲート対応ダンパーが入れられなかったらしいけど、そこはもうちょっとなんとかしようよ。

走行中にMRCC(マツダ・レーダークルーズコントロール)とTCS(トラフィック&クルージングコントロール)を試す。前者はいわゆるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で、クルーズコントロールに前方走行車との追従が付いた奴。試すときっちり動作するし、停止状態まできっちり追従して、前の車が発進したらちょっとアクセルを踏むだけで再発進。これは楽ちん。トランスミッションが無いから加速・減速もきわめてスムース。

TCSはカメラで車線を検知してステアリングアシストを行うものだが、流石にカメラだけでやるのは色々無理がある印象。ごく緩いカーブなら使えるけどちょっと曲率が深くなったりすると特に戻し側が怪しい。大型車両が隣から追い抜くと勝手に反応してハンドルに反力が来るし。高速道路限定で使うもの、と言っても「無くてもいいかなあ」という気はする。

通常の車線検出機能はロードスターにもついてて、こっちはブザー音&警告表示しか出さないので結構検出が厳しいのだが(轍に溜まった水をセンターラインと誤判定したりする)、こっちはハンドルに反力が来る設定のせいか車線検出がかなり怪しい。空いてる道路で試したら綺麗に引いてあるセンターラインを跨いでるのに50%くらいの確率で動作したりしなかったりする。なんか色々と謎。後で設定を見ても標準設定のまんまっぽかったし。

駐車の際には360°アラウンドビューがめっちゃ便利。ハンドルを切るとガイドラインも曲がるけど、これが前進の時にも使えるのが想像以上に便利。ただビュー切替ボタンがハンドル右下のボタンが集中している部分で「見ないと押せない」のが本当に残念。そこはいっそハンドルにスイッチを付けてもいいと思うくらい。

オーディオはかなり良い。BOSEシステムがついてて、EVなので車内が静かな分余計に素晴らしい。ロードスターから持ってきたMP3のデータが完全に負けている。FLACに対応してるらしいのでCDを可逆圧縮で持ってくる方がよさそう。

ドアノブに鍵穴が無く隠れていて、アンロックはドアノブの内側を触って解除、ロックは外側の四角い部分を触るだけでロックされる。これはスマートで良い。ロードスターはロックもアンロックもボタンだし。

小樽での用事を済ませて、まだ航続可能距離と時間は残ってるので余市から赤井川を回って帰ることにする。よくドライブに使ってるコースなのです。にしても「スマホ版GoogleMap」、経路と予想時間は出るのに総距離だけ出ないのはなんの嫌がらせなのか、総距離だけが知りたいんだが。仕方がないのでブラウザからWeb版で調べる。こっちはスマホレイアウトでも総距離が出る、謎。

ここからは良く知ってる道なのでCarPlayを外して車載ナビの画面を見てみる。正直「カーナビに必要な画面」としてはマツダコネクト2のナビの方が全然出来が良い。特に行き先表示の青看板が全く同じ表記で出てくるのがとても良い。リアルで見るより良く見えるし。車速信号を使ってるのでGPSをロストしても安心、スマホナビと車載ナビは使い分けても良いと思う。北海道だと山の中で圏外になる事も珍しくないし。

余市から山道に入ると非常に気持ちがいい。車重は重いけどバッテリーの搭載位置が低いから低重心だし、e-GVC plusのせいか良く曲がる。一部で「トルクステアが出る」とか言われてるけどタイヤのせいか全然問題なし。何よりアクセルに対する追従性が非常に宜しい。

パドルによる回生量変更がかなり便利。「ATに良くついてるパドルシフトでしょ?」と思ってたのだが全然違う、こっちはトランスミッションじゃないから「どんな状態でも確実に、かつ瞬時に切り替えられる」のだ、ATのパドルシフトを実際に使った事がある人にはこの意味が非常にデカい事が分かると思う、特にダウンシフト時はエンジン回転数を十分に落としても入らなかったりするし。でもMX-30 EVのパドルはいつでもどこでも瞬時に切り替わる。気持ちいい。

ただ山道の登りに入ると、大してアクセルを踏み込んでなくても後続可能距離がガンガン減るのが心臓に悪い。これ要するに「今のペースだったらあと何km走れるよ」って意味なんだな。なので途中から見ないことにした。ついでに空調パネルをONにしたら確かに航続可能距離は減るけど、乗り始めの時より全然差が少ない(10㎞も違わない)のでONにすることに。一回車内が温まれば(冷えれば)そんなに食わないのでそこまでシビアになる必要はないと思う。

下り坂でずっと回生を使ってると、航続可能距離とバッテリー残り容量が増えるのが目で見える。面白い。EVってブレーキを踏まなくても回生が効くのだね。

ただ「思い切って走る」気には到底ならず。借り物というのもあるけど、重い車重&FF&スタッドレスタイヤだから「思ったより曲がる」と思っても「最終的に裏切られる」予感しかしない。車重は1,650kgもある。これはCX-5ディーゼルのFFモデルより重く、4WDモデルより軽いという車重である。CX-5の場合は「エンジンが重い」という違いはあるけど。MX-30はマイルドハイブリッドモデルでもFFで1,460kgだからもともと重たいのもある。

そんな訳で150kmほどのドライブを完了。バッテリー残りは32%。ということは走行可能距離は満充電で200kmくらいか。ディーラーの近くにあるスーパーにCHAdeMO充電器があると事前に調べてあったので行ってみる。一台分しか無いので不安だったが、駐車場がめちゃ広いスーパーだったので空いておりました。バックで止めてコードを引っ張って、って届かねえよ! おそらくは「ボンネットに給電ソケットがあるリーフ」に合わせてあるんだろうか。仕方ないので前入れ駐車に切り替えてコードを接続。給電口のゴム蓋を剥がしてソケットをかちりと差し込むだけ。

事前にインストールしておいたスマホの「エコQ電」というアプリからCHAdeMO充電器のQRコードを読み込ませて給電手続きをすればリモートで充電スタンバイ状態になるのだが、このアプリが非常に出来が良くない。といかアプリと言いつつWebKitを使ったガワだけのアプリである。そしてブラウザでも普通にアクセスできるWebサイトの出来が良くない。一回登録したのにID/パスワードが自動入力されないので泣きつつID/パスワードの問い合わせをしたらIDとパスワードが平文で届いてひっくり返る、ひどいなコレ。しかもJavaScriptで制限してるのかID・パスワード欄にコピーが出来ない。一文字ずつ確認して手入力する羽目に。

なんとかCHAdeMO充電器が充電スタンバイ状態になったので「START」ボタンを押せば充電開始。安心したのでスーパーのトイレに行ったり食料品売り場を眺めたり。充電中でもクルマの中に居る必要はないのです。とは言ってもCHAdeMO充電器の「STOP」ボタンを押されたら充電が止まる気がするけど。

んで車に戻ったら…あんまし充電進んでなくね? CHAdeMO充電器は「一回の利用で30分まで」という縛りがあるのだが、結局30分でバッテリー残量32%が62%の30%しか充電されなかった。充電代金は「スタンド毎に設定」とあるが、ここでは「5分以内は250円、以降は1分毎に50円」という設定。つまり30分で1,500円(外税)、ええと150km走ってバッテリーが66%減って、そこから30%充電して1,650円かかった。ハイオクガソリン相当としても燃料代がリッター10km/l切ってるぞおい。

時間も無いので電話でディーラーに事情を話して、そのままディーラーに直行して返却。最後の充電でせめて80%くらいまで充電されてればすっきりしたんだがなあ。

ディーラーにクルマを返却した後は今日一日の分を口頭で伝える。結論としては「モーター走行は素晴らしい」「リチウムイオンバッテリーはダメ」という予想通りの内容。「EVに特化した内容」ではなく「理想とする乗り味をEVで実現した」セッティングは非常に好感が持てる、けど一般受けはしないよなあ。マツダも売れるとは思ってないんだろうけど。

本来なら「SKYACTIV-X」が目指しているのはこういう出力特性なんだろう、という予測は付く。本当にこのくらいのレスポンスとパワーがあれば今の価格差でもSKYACTIV-Xを買いますよオレは。ただ一般には理解されそうもない、現状「ディーゼルより重い」のが一番の問題なんだよねえ。3L版が本命だと思う。

エンジンルームを見るのを忘れていたので開けてもらう。写真で見た通り右側に盛大な隙間、ここにレンジエクステンダーエンジンが入るらしいがどうなるんだろう。エンジンを入れたら振動で色々台無しになりそうな気もする。ディーラーの人はロータリーエンジンのメンテナンス性に関して非常に厳しい見方をしており「止めて欲しい」というニュアンスを感じた。まあたった5万㎞でオーバーホールが必要なエンジンだしな。一定負荷で回すエクステンダーエンジンだったら条件が変わりそうだけども。

ちなみにロータリーエンジンをエクステンダーエンジンにする場合、ガソリン以外の燃料(軽油とかバイオ燃料とか)も十分可能性があるらしい。灯油を入れたら脱税になるんですかねコレ? 法整備上はそこまで追いついてない気が。

そして鍵を返してもらって自分のロードスターに乗り込む。うわ着座位置が低い! エンジンかけるとすげえ振動&うるさい! なんか爆発してる感じがすごい!

EVの後だとロードスターがすげえ野蛮な乗り物に感じる。それはそれで面白い。これが今日一番の感動かもしれない。

[試乗記]マツダ3 セダン XD(ほんのちょっと)

ディーラーで点検待ち中に年改されたせいか最近どこのディーラーにも「マツダ3」の試乗車が無いんですよ、って話をしたら「うちにはありますよ」ってな話が。ただしセダンのディーゼル、しかも年改で良くなった方じゃない古い奴。でも貴重な機会なのでほんのちょっとだけ試乗してみる。

マツダ3、久々に見て乗ると車高も着座位置も思ったより低い。NDロードスターが言われてるほど低くないので余計にそう思う。

ゆっくり走ってみる。やっぱりマツダ3系のステアリングとブレーキのフィーリングは良い、文句のつけようがない。1.8Lのディーゼルは以前乗った時はいい印象が無かったけど、覚えてる印象よりは良かった。傑作エンジンの2.2Lディーゼルに比べると低速からのレスポンスが眠いこととトルク感が希薄なのが残念。燃費は割と良いらしいんだが。あとアイドリング音もCX-5より煩いというか気になる。なんでだろう。

気になるのは乗り心地、あちこちで言われてる通りにやっぱり固い。ちょっと路面が荒れるとゆさゆさ揺れる。ただ「揺れるけど椅子とドライビングポジションがすごく良い+揺れの収束が早いので頭は揺さぶられない」から、個人的にはさほど嫌な気はしない。ここをどう評価するか。

先日試乗した日産ノートの方が明らかに小さい段差の乗り心地は良いんだけど、ノートはちょっと大きな入力があると思いっきり頭が前後に揺さぶられる。どっちが良いかの判断は難しい。「ノートの乗り心地+マツダ3の大きな段差でも頭が揺さぶられない」というのが理想なんだけど、それは両立出来るんだろうか。

マツダ3、全体的に「普通によく出来てるけど、内外装のデザイン以外は突出してない」んだよなあ。時間をかければかなり良くなりそうな余地はあると思う。マツダにそんな余裕はあるのかと言われたら疑問だが。

あと改めてデザインを見たら「4ドアクーペ」だよね。そう思うと狭いとか荷物が乗らないとか後方視界が悪いとかは納得できる。

個人的に「普通の4ドアのMX-30」があったらそれで決まりだと思うんだけど、本当MX-30はあの観音開きドアがダメで。実質2ドアだしアレ。

[試乗記]日産 ノート X

なんかやたら絶賛されてるし、以前乗った前期型「ノート e-Power NISMO S」の記憶が鮮烈だったのもあって気にはなっていた。4WDモデルは来月発売らしいが、とりあえず路面のアスファルトが見える程度に溶けたので自宅近くの日産に行ってみる。

日産:ノート [ NOTE ] 電気自動車 (e-POWER)

展示車を見た感想は「思ったよりずっとちっこい」「内装思ったよりショボい」つう感じ。内装は写真や動画で見るとすごく良い感じに見えるんだけど、実際はかなりプラスチッキーな印象。このデザインならソフトパッドにしてステッチ入れて、とかやらないとダメなんじゃないかと思うけど。デザインと実際の質感が合ってない印象。例の液晶メーターパネルが何も映ってないとすごい安っぽいし。

全体的に四角なのでサイズの割には広いし荷物も積めそう。だけどリアゲートを開けるときに思ったよりリアゲートが手前側に飛び出すのには面食らった。開けた本人が下がらないとダメ、壁ギリギリに駐車したらリアゲート開けられなさそう。後席はまあ普通、ヤリスよりは広いけどフィットよりは狭い? 長時間はつらそう。

免許証のコピーを取ってもらって試乗もしてみる。ドラポジが微妙に合わないというよりは若干ペダル位置がオフセットしてるのかなコレ。とりあえず発進しようと思ったらATシフトの操作方法が分からない。「横のボタンを押して手前側に引っ張ればドライブ、奥に押し込めばバック、上についてるボタンを押せばパーキング」であった。言わなきゃ分からないのはどうかと思う。ヤリスやFITの安っぽいストレートゲート、アレはアレで「バカでもわかる」メリットがあったのだなあ。

ディーラーの人に試乗コースを聞いて発進、以前のe-Powerと違って今回はクリープが付いております、ので恐る恐るアクセルを踏む事なしにリラックスして発進可能。電動パーキングブレーキにオートホールドもついてるので実質クリープは無効に出来るけど、オートホールドはデフォルトでOFF(エンジンかける度に再設定)とのこと。どのメーカーもそうなのかなコレ。

ゆっくり走り出す。いいですねコレ。乗り心地がとてもいい、ちょっとした凸凹くらいなら「床下でなんか揺れてる」程度にしか感じない。ステアリング周りの剛性ばっちり。ただホイールベースが短いせいなのか、大きめのギャップを拾うと盛大に車体が揺れるのが気になる。普段が全然揺れない分ビックリするし、頭が前後に揺すられるから余計に。シャーシは現行プジョー208、ルノールーテシアと共通だと思うんだけど、そういわれると確かに似てる感じはする。

肝心のe-Powerはいい意味で普通、「とてもよくできたエンジン車」みたいな感じで「NISMO S」みたいな「EVちょうすごい」みたいな感じはしない。これは「NISMO S」が異常なだけか。ただ旧型ノートと違ってエンジンがかかっても遠くで「ポー」って鳴ってるみたいな感じでうるさく無い。ワンペダルドライブは廃止されたけど、ドライブモードをECOにすればアクセルの戻しでそれなりにブレーキがかかるので、法定速度で走れば交差点前のブレーキくらいなら行ける。完全に停止しない限りはワンペダル走行は出来そう。

ドライブモードを「スポーツ」にしてアクセルをちょっと踏み込むと結構速い、ここら辺はさすがEV。ただヤリスHVも同じくらい速かった気はするけども。CVTじゃないのでラバーバンドフィールも皆無。いいです。

ただ気になる所はあって、とかくメーターが読みづらい。具体的に言うと位置が下過ぎて「前方注視しながらメーター読み」がかなりつらい。あのメーターパネルは全面液晶パネルじゃなくて上1/5くらいは警告灯がずらっと並んでる。LCDパネルが死んでも警告灯は光るのでそれはセーフティとして正しいのだが、だとしても警告灯は下にしてメーターLCDは上に寄せないか? メータパネルデザインも良くない。ドライブモード切替もいちいちLCDに出るんだけど、三種類しかないから出す必要なくない? ちなみにHUDはメーカーオプションでも存在しない、個人的にはかなりつらい。

ルームミラーは日産お得意の「後部カメラ+液晶パネル」方式、旧型ノートにもついてたけど解像度がかなり上がった感がする。のは良いんだけど、実際使ってみると「前方注視しながら液晶モニタを見るとピントが合わない」のなコレ。いや若い人なら問題なさそうだけどオレはちょっと慣れるまでかかった。通常の鏡にも切り替えは出来るけども。

そんな訳でペダルレイアウトがちょっとズレてる感じはするし、視点をまっすぐ固定して運転出来ないしでなんか色々ちぐはぐ感がある。テストコースのテスト走行だけで作っちゃったみたいな感じ? そして例によってなぜかハンドル形状がD型である。だからハンドルを持ち変える必要があるステアリング比ならハンドルはちゃんと丸にしとけよ。まだ許せる程度だったけど。

試乗コースを一周してディーラーに戻って駐車も自分で試す。アラウンドビューモニターが付いてるし、車体も小さいので楽勝。

結論としては「走りそのものはとてもいいけど、ドライバーUIとして色々合わないのがもったいない」という印象。さらに内装が思ったよりショボくて、正直コレでプロパイロット付けたら300万オーバーと言われても正直納得しがたい。いやFITもヤリスもハイブリッドモデルは250万円を超えちゃうのでやっぱり高いとは思うんだが。

あと旧型ノートの「e-Power NISMO S」のダイレクトパワーっぷりを期待すると完全に肩透かし、ああいうとんがったバージョンは出さないんだろうか。正直アレを知ってしまうと素のe-Powerはちょっと物足りない。もっとEVっぽくしても良いのに。

そんな訳でうーん、という顔をしていたらカタログを渡されて「またどうぞ」と言われてしまった。商談する気皆無。ちなみに「4WDモデルの試乗車は入るんですか?」って聞いたら「その予定はございません」ときっぱり言われてしまう。大丈夫か日産。

帰宅して色々考える、正直ちょっと期待してただけにがっかり感が結構ある。改めて考えたらあの小さい車体を走らせるためのバッテリーを充電するのに1.2Lの3気筒エンジンが必要とか割と絶望しない? そのエンジンで普通に走らね? いやe-Powerの方が燃費は良いんだろうけど、バッテリーの分重いだろうし。せめて発電用エンジンが660ccくらいだったら「EVって効率いいよね」って話になると思うんだが。

あとノートもフィットe:HEVもそうだけど、全開加速を2回やっただけでバッテリー容量が減ってるのが見えるので、ミニサーキットとか全開一周出来なさそう。と思って調べたら旧型ノートe-Powerでは筑波でも全開で一周持たないらしい、まあ普段使う分には問題ないけど、北海道みたいに「ハイペースで走れる峠道が延々と30分以上続く」ような道をガチで走ると途中で制限モード入りそう。法定速度は守ろう。

「e-POWER NISMO 2000km超えました」あどのブログ | R35specVとC43 WAGONな生活 – みんカラ

ちなみに今回のノート、e-Powerしかないので最低でも車両本体価格が200万円超えとちと高い。なので「ノートの安価なグレードを乗ってた人」の受け口が「マーチしかない」という悲惨な事に。ちょっと待て現行マーチは先代ノートより古いクルマだぞ。さらに言うと「ティーダのサイズを好んで乗ってた人」が「代わりに乗るちょうどいいクルマ」が無くて困ってるらしい。ノートじゃ小さすぎるらしい。

その後も色々調べたけど、やっぱりEVで長距離走らせるならトランスミッション必須っぽいのね。高速巡行時のエネルギー効率がめっちゃ悪いからねえ。

ポルシェのEV「タイカン」の革新は、「2速トランスミッション」にあり | WIRED.jp

あとはフライホイールもそのうち付きそう。発進時には要らないから、一定速度巡行時に有効になるようにクラッチ付きとか。むろん現在は存在しないからこれから作るのだ。

EVってバッテリー以外にもまだやることは山積みじゃないのかなあ。そしてそういった「やるべきこと」をやろうとしているメーカーは結構少なかったりする。この過渡期はあと10年じゃ終わらないと思う。

「自動車」ここ最近試乗したクルマの雑感とかまとめ

  • マツダ 3 ファストバック 15S/XD/X:クルマとしての基礎力がとても高い。見た目も格好良いけど、デザインに全振りしてるので広さとか解放感とか後方視界が犠牲になってるのを許せるかどうか。個人的には許せる。問題はエンジンで1.8Lディーゼルが正直言ってよろしくない、注目されてたSKYACTIVE-Xは悪くないけど価格が高い&重い、実はガソリン1.5Lが素晴らしい出来で「ハンドリングマシン」と呼べる出来だが、1.5Lで付かない装備が多すぎる。100周年記念車には全装備付いてる? 革シート要らない
  • マツダ CX-30 20S/XD:「スタイルがやや普通になったマツダ3」であり、その割にはマツダ3のパッケージのネガな部分はあんまし改善されてないので「デザインとパッケージどっちを取るか」が許せるかどうか、個人的には許せない。2.0Lガソリンエンジンは極めて普通、「うまい素うどん」みたいな。1.8Lディーゼルはやっぱり心象良くない。値段が正直高いので「こっちを買うならCX-5」みたいな部分がある
  • マツダ MX-30:実は隠れ名車みたいな感じ。マツダ3系の中では一番出来が良い。バッテリー搭載を前提してる設計や観音開きドアのためかシャーシの剛性感が一番いい。2.0Lマイルドハイブリッドも悪くないし値段も割安感がある。あの内外装とドアを受け入れられるかどうか、あと思ったより燃費が良くない
  • マツダ CX-5 XD 100周年記念車:全般的にあんまし弱点無し、そりゃ売れるよねという印象。夏タイヤの時に若干ハンドルセンターがユルいのが気になったが冬タイヤだと問題無かった。車格の割にはかなり安い印象、2.2Lディーゼルエンジンはかなり良い。車幅が1,840mmとやたらデカいのが難点
  • スバル レヴォーグ STI Sport EX:スタッドレスタイヤのせいかあんまし良い印象が無い。基礎力は高いと思うんだけど「手放しで褒めるほど」なのかは分からず。1.8Lターボは別段パワーにあふれるわけでもないし、加速すると盛大にCVTのラバーバンド感が出る。電子ウィンカーは慣れればいいかもだけど違和感がずっと取れなかった。あの車格と値段でHUDとパノラマビューが付かないのは厳しい。高速道路専用のアイサイトXモデルじゃないとメーターが全面液晶パネルにならないのもつらい
  • トヨタ カローラ ツーリングワゴン HYBRID WxB e-Four:思ったよりずっとちゃんとしたクルマだったのでびっくりした(失礼) 前方視界がとても良くて、その点でマツダ3とは真逆のクルマ。ヘッドライトにALHが付かないのが唯一のガッカリポイント。もうちょっと評価されても良い気はする
  • トヨタ ヤリス G 4WD/ハイブリッドZ e-Four:個人的に予想外にツボに入った、ビックリするくらいハンドリングカー、試乗した4WDモデルはリアサス形式がFFと違うのでFFとは違う可能性あり。でも基本狭いし内装もショボいので、そういうのを許容できる人向け。ガソリンはちょっとトロいけどハイブリッドは結構速い、ただ乗り味はペラシャのせいかガソリンのが良かったかも。とにかく内装がショボいのと価格が高い(一番高いグレードにしないとヘッドライトがLEDにならない&HUD付かない)のがネック。欧州仕様だとATシフトゲート周りがブーツ付きの立派な奴でサイドブレーキも電子式になってるので日本仕様もそうしてほしい
  • トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ e-Four:出来は良いけど普通のクルマだと思う。GRヤリスの後に乗ったのがまずかったかも知れない。素のヤリスに比べたらマシだけど、やっぱり値段の割にATゲート周りが安っぽい作りなのは気になる
  • トヨタ GRヤリス RZ:「良いクルマなんだろうなあ」とハードルを上げていったら楽勝で乗り越えてくれた。クルマとしての出来もさながら、市販車と思えない組付け精度が物凄い(ボディのチリが合う合わないの話ではない) 走ってて「飛ばしても全然怖くないだろうな」という安心感すらある。あの値段はバーゲンプライスだと思う
  • ホンダ フィット e:HEV HOME 4WD:期待して乗ったんだけど割と期待外れだった、ハイブリッドシステムが不調だった可能性大なので保留。乗り心地は上質だけど「Bセグの割には上質」程度だと思う。個人的にブラインドスポットモニタが付かないのが非常に厳しい。今どきApple CarPlay/Android Auto非対応のナビもつらい(ホンダでなぜか現行フィットだけ非対応、軽ですら対応してるのに)
  • プジョー 208 GT-LINE:期待して乗ったけどどうにも。シャーシは良いのにダウンサイジングターボとDCTの組み合わせは日本の交通事情に合ってないと思う。あとi-Cockpitとか言う最低のインタフェースが色々台無しで「i-Cockpitである限り絶対買わない」まである

今後試乗してみたいクルマ

  • 日産 ノート e-Power e-Four:以前試乗した先代ノートe-Power NISMO Sが猛烈な印象だったので。前評判も良いので気にはなる、ただe-Four仕様が出てくるのは来年春くらいかなコレ
  • トヨタ GRスープラ RZ:すいません値段的に絶対買えないけど試乗はしてみたい。以前は試乗車あったんだけど夏タイヤ限定らしくて現在展示のみになってた
  • レクサス IS-F 300:これも買えないけど「FRセダン」として気にはなる、流石に300の試乗車はほとんどなくて最低300hなのがちょっと残念

乗り心地に関しての言及が無いのは「一定コースで比較しないと全然分からないから」であります。んでも全体的にそんなひどい奴は一個も無かった記憶。あと「CVTのステップ制御」って今まで意味が分からなかったんだけど、CVT車を色々乗ってみてようやく理解した、CVTのラバーバンドフィールをごまかすための苦肉の策なんだなアレは。どうやってもCVTである以上無段変速するとラバーバンドフィールは避けられない。

色々試乗してたらなんとなく自分がクルマに何を求めてるのか分かってきた感はある。それで次はどうするのか…どうしよう。

[自動車]現在のBEVがバッテリー交換式に出来ない理由

最近はBEV(Battery Electric Vehicle、要するに電池のみで駆動する自動車)が流行ってきてるけど、従来からある「充電に時間がかかる」「航続距離が短い」という問題が解決されたわけではない。

たまに「バッテリーを共通化して交換式にすれば普及する!」っていう人がいるけど、なんでそれをやれないのかの理由も考えた方が良いと思う。分からない? じゃあオレなりに考えた理由。

  • バッテリーが重過ぎる、リーフで言うと通常モデル(WLTC航続距離322㎞)で300㎏、e+(WLTC航続距離458km)で440kgもある。実に車両重量の20~25%がバッテリー。なおガソリンの比重は0.74弱なので50L入れても40kg無い。水素だと満タンでも数㎏程度
  • リチウムイオンバッテリーは衝撃に極めて弱いため現在のBEVはほぼ「床下を格子状構造にしてそこにバッテリーを埋め込む」形式にしている。こうしないと衝突時(特に側面)の安全対策が取れない、床を格子状構造にするので副作用としてシャーシ剛性がめっちゃ上がる。同時に重量も重くなるけどバッテリーのが重いから無視してる。車重は重いけど重心が低くて剛性も上がるので乗り味は良くなる。そしてみんなBEVを絶賛する
  • 一部のBEVはバッテリーの温度監視のためにバッテリーの冷却、保温を行ってる(テスラがエアコンによる空冷、アウディe-Tronが水冷、つまり放置しててもバッテリーが減る)、このためバッテリーの装着・脱着が困難
  • バッテリーモジュールは複数積むことになるが接点抵抗がバカにならないのでごっついケーブルとターミナルで接続されている、交換式バッテリーみたいに板バネ接点とかやったら損失が半端ないことになる(多分致命的なレベルで熱が出る)
  • バッテリー自体ガンガン進化してる途中で、この後に全個体電池も控えてるので「モジュールの標準規格」とか時期尚早すぎる。ちなみに全個体電池になると容積辺り効率と重量とか色々と以前されるけど、ジャンプアップというほどでもない

これまんま「今どきのバッテリー駆動機器はなんでバッテリー交換出来ないようにしてあるのか」って話と同じなんだよな。カメラとかはバッテリー容量が少ないのでまだまだ交換式でいけるけど。

以前「グランド・ツアー」でバッテリー交換式のBEVフォーミュラが出てたけど、交換は専用のスタッフと機器(というかトレーラー)が必要で数十分かかる。そういうもんだと思う。

中国のタクシー会社でバッテリー交換式やってるよ、って話もあるけど、前述の問題点は一切解決出来てる訳ではない。アレはたぶん「バッテリーモジュールが小容量」「安全面はちょっと疑問」だと思う。当面のつなぎにはいいけど、長期間は無理だろうなあ。

ここまで書いておいてなんだけどBEV自体は嫌いではないのです。アクセルレスポンスとか内燃機関では物理的に絶対に実現不可能な応答性だし。でも現状一般への普及は無理、今の内燃機関自動車をBEVに置き換えたら発電量が全然足りないというオチが待ってる。

[試乗記]ホンダ フィット e:HEV HOME 4WD / トヨタ ヤリス ハイブリッドZ 4WD / マツダ CX-5 XD 100周年記念車

例によって素人がほぼ法定速度かつスタッドレスタイヤでちょろっと試乗しただけのお話。

最初はフィット。本当はガソリンとハイブリッドどちらも乗り比べてみたかったのだがガソリンの試乗車が無かった。全体的に試乗車はハイブリッドが多めの模様。

フィット|Honda公式サイト

グレードは下から2番目の「HOME」だけど安っぽさは全く感じない。これが一番の売れ筋らしいけど納得。ウリの視界の良さは素晴らしい、だがドラポジが合わない、具体的に言うと尻の座りがよろしくない。ちょっと嫌な予感。

走り出したら確かに上質な乗り心地ではある。角が取れてる感。小雨が降ってきたのでオートワイパーが動作したら、あまりのワイパーアームの長さに笑ってしまう。そうかフロントウィンドウがデカかったらそうなるな。アーム自体も頑張って細くしてる感はあるけど。

にしても走りは本当に「上質だけど普通」としか言いようがない。徹底的に角を丸くされてるみたいな感じで、なんか上滑りしてる感じもする。にしてもパワートレーンが元気なさ過ぎてびっくりする。メーターコンソールのモニタを見るとほぼエンジンで走ってるし、試しに広い道路でちょっと踏み込んでみたらモーターアシストが入る、アシストが入った瞬間にターボみたいなパワーのかかり方がする。これ本当にストロングハイブリッド?

40㎞から60㎞の全開加速を二回ほどやったら、それだけでバッテリーが半分くらいに減って驚く。ううむなんだろうコレ。ガソリンに乗ってれば違うんだろうか。

後で調べたらフィットのe:HEVシステムは「基本的にモーター駆動で、パワーが足りない時、あるいはバッテリーが空になった時のみエンジンが直結する」仕組みらしい。いや全然そんな動きしてませんでしたが、なんだろうコレ。外気温が寒かったので(3度くらい)バッテリー保護モードに入ったのか、あるいは試乗した個体が調子悪かったのか。

HUDはおろかブラインドスポットモニタも付かない(純正ナビ+オプションでナビ画面に警告が出るらしいが、なんで左右後方の警報をセンターコンソールに出すのだ)し、アラウンドビューモニターもないし。何より安全装備の「ホンダセンシング」が「無しの仕様」があるのが気に入らない。そういうのは競技ベース車でもない限り取っちゃダメだろう。

パーキングブレーキは電動、このためにリアブレーキをディスクにしたという苦労話(当初ドラムで設計してたが、ドラム式電動パーキングブレーキを提供するはずだった海外サプライヤがやらかした)オートブレーキホールド(一回ブレーキを踏んだらパーキングブレーキがかかるのでブレーキから足を離しても動かない、アクセルを踏むと解除)も付いてるのはとてもいいと思うんだが。

最近のクルマは「でっかいモニタが付いてて、そこにオプションのカーナビソフトを入れるとナビになる」というのが普通なんだが、フィットの場合はBASIC/HOME以外はメーカーオプション。しかもApple CarPlay/Android Auto非対応という状態。先代は対応してたのに退化してどうする。

そんな訳で割と期待してたけど調子はずれであった。ちゃんとしたコンディションでガソリンとハイブリッドの乗り比べはしてみたいけども。

次は先日試乗したガソリン4WDがすごく好印象だったヤリスのハイブリッド。しかし試乗車情報を見て来たディーラーに行ったら貸し出し中と言われてしまう。仕方がないのでそこから再度調べて、ハイブリッド4WDの試乗車がある最寄りディーラーに電話して用意されてるのを確認してから移動。電話が一番早いのは良くある事。

トヨタ ヤリス | トヨタ自動車WEBサイト

さてヤリス ハイブリッドも4WD、e-Fourなので後輪はモーター駆動。調べたら後輪モーターアシストは70km/hまでらしい。昔のe-4WDとかは30km/hだから、まあ一般道路を走る分には問題ないか。高速道路だと実質FFになるのがちょっとアレかもしれない。

乗ってみたらこれがまあ速い速い。モーターアシストがガンガン効いてガソリン4WDとは別物、アクセルを踏み込んだ時のCVTラバーバンドも気にならない、そこはモーターでうまくアシストしてるんだろうか。これがトヨタ最新型ハイブリッド。コレでリッター30km/l普通に走るとか化け物か?

乗り味は相変わらず楽しい、けどなんかガソリン4WDのが加速以外は良かったような。車重が若干増えたせいか、あるいはプロペラシャフトの有無による剛性の差? どっちにしろこの価格差でこの動力性能の差+燃費なら普通はハイブリッドを買うのでは。そのくらい違う。

今回乗った車にはメータークラスター上に穴が開いてた。そうヤリス、最上級のZグレードだとHUD付いてるんですな。ただ最初は全然見えなくて謎だったけど、後で角度調整したら見えるようになった。ちょっと見える範囲が狭いかも。タコメーターまでHUDに出るのはやり過ぎ感もある。LEDヘッドライトとHUDを付けたかったら最上級グレードにするしかない。それでも標準はまだスチールホイールなんだよな。やっぱり高いなあ。

見積もりを取ってみたら「買えなくはない」という感じ。割高ではある。装備を考えたらヤリスクロスの方が豪華なんだけど、その分値段は良い、そして乗り味は個人的にヤリスの方がいい。ううむ。

そのあとにマツダに行く。以前購入を検討してたCX-5の改良情報が入ったということで呼ばれてたのです。CX-5の改良は…なるほど、まあ小改良。気になってた質問を投げてみる、ずばり「デミオってモデルチェンジするんですか?」と。「来年出ますよ」と言われた。それを待った方が一番いい気がしないでもない。

マツダ3 15Sの試乗車があればもう一回乗ってみたかったのだが用意されておらず。ちょっと考えてCX-5に乗ってみることに、ちなみに9月に一回乗っております。ディーゼルの100周年記念車なのでオプションてんこ盛り状態。

MAZDA CX-5|クロスオーバー SUV|マツダ

「ちょっと暖めてきます」って言われて「え、今のディーゼルエンジンもグローランプとかあるの?」とか今の人に分からないネタを考えてしまったが、実際に車に乗って納得。レザーシートがめっちゃ冷たい! シートヒーターを5分かけてもこの冷たさは厳しい。レザーシート特有の問題らしい。なお夏は夏で熱がこもるので、溜まった熱をかき出すファンも付いております。いやレザーシートって何が良いのコレ?

とりあえず試乗。マツダ車に慣れたせいかドラポジがすぐ合う。以前乗った時はステアリングのセンター付近の妙なダルさが気になったのだが、全く同じ個体なのに今日は全然気にならず。ということはタイヤ依存か。

にしてもこのエンジンは以前乗った時も好印象だったけど、あらためて良いなと思う。二回目で慣れたせいか前回より色々分かる感じがする。車重の割にはむっちゃ曲がる。気に入ったのでディーラーの人に運転してもらって後席も体験。ちょっと突き上げ感があるけど悪くない。何より着座位置が高くて見晴らしが良い。これならロングドライブも大丈夫そう。

おススメされた「SMART EDITION」で見積もりを取ってみると、これが意外に安い。フィットやヤリスに比べたら絶対値では高いけど、車格を考えたらお得じゃね? という感はものすごくある。そういう目線で車を選ぶのは止めた方がいいとは思うんだが、「車の値段ってなんだろう」とは考える。なにより装備面ではほぼ文句が無いし。

帰宅してカタログを色々見て考える。ここで初めて気づいたけど、トヨタハイブリッドってメーカーオプションでAC100V アクセサリーコンセントを付けると「災害時にめっちゃ使える」ことが判明した。ヤリスでさえ最大1500Wを数時間供給可能。エンジンをかけて発電機モードにすると4日ほど1500Wが供給可能。すげえなコレ。やっぱりヤリスはハイブリッドのが色々良さそう。

トヨタ、1500Wの電力を供給できる新型「ヤリス」は“災害時の備え”としても選ぶ価値あり – Car Watch

[自動車]今度買うであろうクルマに求めること(追加)

割と大事な事を書き忘れていた

  • 法定速度で走っていても退屈じゃなく楽しいこと

これ大事ですな。NDロードスターはこの点は満点、こないだ乗ったヤリス(普通のガソリン4WD)も良かった。

ヤリスはVSCの介入が遅くてスタビリティに問題があるみたいな話を見たけど、ひょっとしたら標準装備の夏タイヤが怪しい気がする。例の「ステアリングの設置感が希薄」なのもコレに繋がりそう。

どこぞで「AT車に乗ってサイドブレーキを引いたままでアクセルを踏み込んだら発進しなくて、さらに踏み込んでしまった、MTならクラッチ操作があるのでこんな危険はないはず」とか見たんだけど、一番問題なのはその人の運転スキルであり免許を返上してほしいと思った。うちのNDロードスター、サイドブレーキ弱くて引きっぱなしでも普通にクラッチミートして発進出来ちゃうんだよなあ。ATのがサイドブレーキは強力なんだよね。

[自動車]今度買うであろうクルマに求めること

つらつらと書いてみる。

  • 駆動源に魅力があり、際立った不満がないこと。多分ここが一番心情的に重要
  • ステアリングに関してはクイック過ぎずダル過ぎないこと。正確であることが重要。センターがダルだったり、ハンドル戻し時にハンドル形状が気になるようなのは論外
  • 乗り心地はそこまで重視しないが、あんまりひどいのはNG。疲れないのが一番
  • 安全性を確保できるだけの視界および追加装備は必須。特に斜め後方のブラインドスポットモニタは必須。LED分割ハイビーム制御ヘッドライトも欲しい
  • バックカメラは付いてて当たり前よね? 車体サイズによってはアラウンドビューも欲しい
  • 安全性の観点からHUD、防眩ルームミラーは欲しい
  • 乗り降りはそこそこ楽であって欲しい、低いと病気の時とかしんどい
  • 荷物は最低限交換用タイヤ四本が積めることが条件
  • 最低乗車人数は4人、買い物時の利便性から「単体で開く」後席ドアはあったほうが良い
  • MTかATかはそのクルマの動力性能等も考慮するが、基本的にはよほどの理由がない限りはMTにはしない(なおNDロードスターは「よほどの理由」に該当する)
  • ちょっとした外出もおっくうにならない程度の取り回しの良さも必須
  • 外装も内装も重要だが、どちらかというと内装を重視したい。嫌でも目に入るし
  • いい音のオーディオが付いてると高得点
  • ナビはCarPlay対応が欲しい、CarPlayで問題があるようなら後で純正ナビソフトが入れられるとなお良し
  • 燃費は走行性能に支障がない範囲で良くありたい
  • コネクテッド機能は興味なし

実際問題コレを全部満たすクルマはたぶん無いか、あっても高い。だから困る…。

[試乗記]スバル レヴォーグ STI Sports EX & トヨタ ヤリス G 1.5L-CVT

例によって素人がほぼ法定速度かつスタッドレスタイヤでちょろっと試乗しただけのお話。まずはレヴォーグから。

スバル レヴォーグ

レヴォーグはやたら前評判が良いのと、一時期スバル車を三台も乗り継いだのにシャーシがSGPになって以来疎遠になってたので久々に乗ってみようかなと。事前に展示車に座った時は割と好印象。外観は…まあ許容範囲か。スバルだと現行XVのMC前が良かったんだけど、MCでちょっと好みからズレちゃったんだよなあ。

試乗車がSTI Sports EX(STIかつアイサイトX付き)という最上級グレードでちょっとビビる。乗り込むと例のセンターパネルのデカいナビに驚愕する。ドラポジの調整範囲はかなりデカくて合わせやすい。ハンドルのオフセットも一時期に比べてだいぶんマシになった感。

軽く走り出すと分かるシャーシのガッシリ感。いい感じで車体が重たい。走行性能は過不足無しという感じ。しかし今どきHUDが付いていないのはちょっと時代遅れ感が。その分メーターパネルが液晶パネルでナビのマップ画面も出せたりするんだが、アイサイトXモデルじゃないと液晶パネルじゃないのはちょっと疑問。例のデカい画面のナビとセットにすべき。

メータークラスターに出るクルマのCGで灯火類の点灯状態(ブレーキランプとかウィンカーとか)が出るのは立派。「周りからどう見えるか」が安全につながるという考え方は正しい。ただウィンカーレバーが電子式なのね。つまり機械式のように左右に傾いた状態でロックされない。これが慣れない。

ハンドルについてるボタンで走行モードが変えられる。「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」でそれぞれ明らかにハンドルの重さと乗り心地が変わる(モード一個ずつの違いがよく分からないとか言ってる人もいるけど鈍いだけだそれは)、ただボタンを押すたびに切り替えなんでちょっとめんどくさい感。

面白いのはこれがカスタマイズできるので「乗り心地はコンフォートにしたいけど、コンフォートだとハンドル軽すぎる」という場合にカスタム設定すれば自分好みに出来る。ちょっと感心。にしてもそのあたりの設定をデカいコンソールのタッチパネルで設定してると、本当に家電みたいな感じがするなあ。

交差点で曲がるとスバル車にしてはステアリングギア比が明らかにスローなのが面白い。いい方向性だと思うけど、スローにするってことはハンドルをたくさん回すって事であり、ハンドルを回すとハンドルが下が平らなD型なのがすんごい気になる。プジョーのi-Cockpitもそうだけど、なんでお前らはハンドルを丸くしないのだ。丸くした方が絶対にいいのに。

スタッドレスタイヤのせいか全体的にアンダー志向な感じ。目の覚めるような回頭性はないみたいだけど、そういうクルマじゃないのだろう。あとシートは個人的にかなり良い。アイサイトと相まって高速道路のクルージングはすんごい楽そう。

踏み込むと独特のエンジン音の吹け上がりと加速感のズレが。う、これがCVTのラバーバンドってやつか。普通に乗ってると気にならないけど、いざ加速するって時には気になる。慣れたら多分大丈夫だとは思うけども。

ディーラーに戻って駐車させて貰おうと思って気づいた。バックカメラは付いてるけどアラウンドビュー(車を真上から見るアレ)がない! 後で見たらアイサイトXのためにフロントにもドアミラー下にもカメラが付いてるのに。この価格帯、この車格でオプションでも付かないのは結構きついのでは。前後オーバーハングが長いし。

全体的には良く出来てるんだけど、価格の高さと、HUDとアラウンドビューが付かないのがちょっとアレかなあ。「いいクルマだけど響かない」という印象であった。

食事を挟んで、調べたら自宅最寄りのトヨタでヤリスのガソリン4WDな試乗車があることに気づく。以前から一回乗ってみたいとは思ったので行ってみることに。幸い試乗車はちゃんとあった模様。

トヨタ ヤリス | トヨタ自動車WEBサイト

担当についたディーラーマンが今どき珍しく「車好き」を自称する人で、こういう人が出てくるのはずいぶん久々だなあと思う。良くも悪くもディーラーの担当者って淡白な人が増えたよね。

用意してもらったヤリスは1.5Lの4WDでCVT、正確に言うと4WDにすると「1.5Lハイブリッドか1.5LのCVT」しか選択肢がない。さんざん知ってたけど、やっぱり内装が安っぽい。いやそんなに嫌いではないんだけど、商業車みたいなATシフトゲートと今どき手引きなサイドブレーキはなあ…。欧州仕様だとなんかすごい今っぽいブーツ付きシフトゲートで、サイドブレーキも電動なのに。あれ日本仕様に持って来いよ。

んでも公道に出た瞬間に評価は一変した。これすごい楽しい。いい意味でゴーカートっぽい。この手のコンパクトカーはどれも「家族のことも考えてます」って感じだが、ヤリスは「運転手以外考えてません」みたいな割り切りを感じる。個人的にすごく乗りやすくてすごい楽しい。にしても重心低いわコレ。某氏がレビューで言ってたフロントの設置感の無さは特に気にならず。

空いてる道路で踏み込むとエンジンが盛大に唸るが加速は…みたいな。やっぱりその辺は期待しちゃダメか。あとこっちも踏み込むとやっぱりCVTのラバーバンドが出る。

ちょっと長めなコースを回って満足、駐車を試したらこっちにはアラウンドビューが付いてる! いやこの車格だと別に要らない気もするけど。あったら嬉しい装備ではある。

そんな訳で久々の「乗ってみたらすごく気に入った」クルマであった。こんな楽しいクルマが営業車であちこち走り回ってるのは夢があるなあ。まあ本当に内装の安っぽさはどうにかしてほしいんだけど、MCでATシフトゲートとパーキングブレーキは欧州仕様と同様に準拠になる気がするけど、今の外装デザインが気に入ってるのでそこが変わると微妙かも。

動力性能と燃費とでハイブリッドにも乗ってみたくなった。ライバルのフィットにも乗っておくべきかなあ。

GRヤリスは別物として、「普通の良く出来たクルマ」だったヤリスクロスと普通のヤリスがここまで違うとは思わんかった。やっぱりクルマは乗ってみなきゃわからない。

[試乗記]マツダMX-30 & プジョー208 GT-LINE

本試乗記はただの素人がディーラーでちょこっと試乗させてもらって、ほぼ法定速度順守で走っただけの状態から書いた感想でうんたらかんたら(念のため

最近の試乗記が無駄に長くなる傾向にあるのでエントリを分ける事にした。ちょっと前の試乗記とかも分割するかも。

マツダMX-30はEVとしてすんごい期待してた、と同時に航続距離が短いのもあって日本じゃ売れないとも思っていた。とか思ってたらまさかの「マイルドハイブリッド仕様で日本導入」で、思ったより早く売り出したから逆に驚く。マツダは一体何をしたいんだろう。とか思いつつディーラーに見に行く。

MAZDA MX-30|ハイブリッド クロスオーバー SUV|マツダ

ディーラーには展示車と試乗車の二台が置いてあった。まずは展示車でチェック。なんというか、近くで見た時と離れて見た時とでかなり印象が変わるデザインである。細部は凝ってるんだけど、離れてみるとのっぺりしているというか。マツダ3、CX-30のキレッキレなデザインセンスはあんまし無い。フロントは特に好き嫌いが出そうで、オレもあんまし好きではない。でも屋根のツートンカラーは割と好き。

内装もまた変わってて、センターコンソールがフローティング構造になってるけど正直どうなの? という感。特に前方の下側に物入れがあるんだけど、正直アクセスしづらい。ただセンターコンソールの位置としてはかなり良くて、ドリンクホルダーにペットボトルを入れたままセンターコンソールにひじ掛けっぱなしに出来て、なおかつマツダコネクトのコントロールノブが実に良いところにある。問題は空調パネル。そこにデカいタッチ付き液晶パネル要る? みたいな。物理ボタンが付いてるのはいいけども。

目玉の観音開きドア、フロントドアを開くとぶっといBピラーが目に入ってきて「これ開くの?」と思ったらマジで開くので驚く。後席に座ってみたら思ったよりは普通に座れるけど流石に囲まれ感が強い、長時間の移動は勘弁願いたい感じ。ただ後ろドアの閉まる感触がものすげえです。あんなどっしりとしたドアの閉まる音は久々に聞いた。「ドア開閉音はチューニングできる」とはいうけど、これチューニングでどうのこうので出る音ではないと思う。

ただこの手の観音開きドアって「前側ドアを開かないと開かない」んだよね。さらに内側から開くことも想定していない。前に座ってる人が降りてドアを閉められたら、後席の人が自力で出るのはかなりつらい。そういう事を考慮しておく必要がある。子供用には物理的チャイルドロックでいいかも知れんが、チャイルドシートの出し入れは大変だろうしなあ。だから4ドアとは言えないと思う、2+2ドア?

ここら辺で試乗。試乗は100周年記念モデル、つまりは全部入りの豪華版。自分の愛車がマツダなせいかマツダ車は毎回ドライビングポジションが決まりやすい。ATセレクタを引っ張ろうとしてちょっと躓く。一見ストレートゲートなんだけど、実際はPゲートだけが右に入ってて、そこからDレンジに入れるには一回左に倒してから手前に引かないとダメ。慣れれば大丈夫だとは思うけども。

そして走り出す、と同時に異質感に気が付く。これボディ剛性すごくね? マツダ3やCX-30より明らかにがっしり感が凄い。後ろドアが小さいのが影響してる? いや多分それだけじゃあない。後で知ったけどEVって事故を起こした際にバッテリーの破損を防ぐためにフロアの補強がかなり必要らしくて、それが効いてる気がする。

そんな訳で乗った感じはすんごいどっしりとして好印象。フロアの振動も抑えられてて静か。んでもちょっと走るとマツダ独自の乗り心地というか、床下でリアサスが「カコカコカコ…」と音を立てながら動くのが良く分かる。ここら辺はマツダ3、CX-30そっくりのがっかりポイント。自分の体はあんまし揺れないしショックもあんまし来ないけど、とにかくこの音と振動ですごく損している感じがする。

これが「トタトタトタ…」みたいになったら相当印象が変わると思うんだけど。ちなみにCX-5くらいになると車重が重いせいか「トタトタトタ…」になる。CX-5はアレはアレでハンドリングとかがちょっと気になるんだけども。

ハンドリングとブレーキはマツダ3/CX-30同様に特に文句は無し。きっちり仕上げてある。逆に言うとこのくらいが最低ラインになって欲しい感はある。

エンジンはSKYACTIVE-G+マイルドハイブリッド。要するにSPCCIじゃない2LガソリンエンジンにSKYACTIVE-X同等のマイルドハイブリッドを組み込んだもの(と説明を受けた)、コレが普通に良い。1.8Lディーゼルほど踏み出しが鈍くなく、2.0Lガソリンより出だしのトルク感が良い。ぶっちゃけマツダ3、CX-30にコレ積めよ、って言いたい。

降りるときにサイドシルに「MX-30」の文字が光ってるのに気づく。ちょっとやりすぎ。ただ高級車に多い「ドア開けたら路面にメーカーロゴマークが照射」よりマシか。アレは正直恥ずかしい。

そんな訳で「形はちょっと変」「内装も見た目はいいけど変」「だけど走りだけはかなり良い」「乗り心地だけはもうちょいなんとか」みたいなクルマでした。ただコレ割と安いのよね。CX-30より10万円くらいしか高くない。マツダ3にこのエンジン載せたらちょっと考えるかも知れず。そんな印象。

ディーラーを出た後に同じ試乗コースをロードスターで走ってみたら改めて善し悪しが分かる。ロードスター、本当コーナーが気持ちいい、でも乗り心地だけ本当どうにかしてほしい。「カタカタカタ…」どころじゃなくて前後に揺すられる。

夕方からは新型プジョー208を見にディーラーに。きっかけはCGTVで見た印象がかなり良かったので。あとあちこちで「クルマとしてよく出来てるよ」という話も聞いてたし。しかしディーラーの人がそっけない。マスクから鼻を出すな。

NEW PEUGEOT 208 | プジョー公式サイト

展示車は黄色の「GT-LINE」、外観はかなり好み、だけどセンスがちょっと古いとか言われそうな感もある。サイズも良い。内装もぱっと見はかなり良い。

乗り込んでみる、おおこれが悪名高い「i-Cockpit」か! 上下を潰した(上下が平ら)ハンドルがやや下の方にマウントされてて、そのハンドルの上からメーターパネルをのぞき込むという変な形式。メーターパネルはよく見ると二層表示になってて無駄に凝ってる。手前側がハーフミラーなのかなコレ。カタログには「3Dデジタルヘッドアップインストルメントパネル」とある。うーむ。

左を見るとバカでかい液晶モニタが目にうるさい。ドアトリムの緑のラインが格好いいなーと思ったら光るんかコレ、夜にうるさくない? 空調はスイッチが一列に並んでるんだが、ピクトグラムマークが真上を向いてるので正直見づらい&意味が分かりづらい。空調ダイアルは小さい&左端で遠い。コレ左ハンドル仕様そのまんまっぽいな。

試乗させてもらえるようなのでアンケートを記入してしばし待つ。試乗車も同じ「GT-LINE」の白。ドラポジを決めようにも「i-Cockpit」のせいでなかなか決まらない、ハンドルが干渉してメーターが見えなくなるのよ。なんとか決めてATセレクタを動かそうとすると動かない。セレクタの上に付いてるのはPレンジボタンで、そこから動かすにはレバーを握りこんで親指の所にあるボタンを押さないとダメ、言われないとまず分からない。まあ盗難防止なのかも知れず。

動き始めたらシートポジションが全然合ってない事に気づいて調整しなおして出発。車体が重たく感じる。お気づきでしょうが、この時点での心象はかなり良くない。まだディーラーの敷地内を出てないのに。

ようやくディーラーの外に出てゆっくりとドライブ。Bセグメントとは思えない車体の剛性感。床下から常時エンジンの振動が入ってちょっと安っぽいが車体の動きは安っぽくない。エンジンはそこそこトルクフル。速度調整もしやすいし、何よりブレーキが凄くいい。初めて乗るのに踏力一定ブレーキ(ブレーキ踏力一定のまま同乗者の頭を揺らさずに綺麗に狙った位置で止める)が決まるクルマとか珍しい。

ミッションはトルコン8速ATだが、街中だと結構せわしない感じ。全体的に思ったよりしっかりした感じで感心する。ただビシっとまっすぐは走らない、ドラポジが合ってないのか、速度域を上げたら変わりそうだけども。

しかし交差点を曲がると魔法が解ける。正確に言うと交差点を曲がった後、ハンドルをセンターに戻す時に「ハンドルが丸くない」のでするすると手の中で戻らない、その現実が非常につらい。ハンドルが丸いのには意味があるんだなあ、という当たり前のことを嫌でも理解させられる。あと低速からちょっと踏み込むとターボラグのせいなのか踏み出しが結構トロい、この時にトルコンがズルズル滑ってる感じもする。わざとかなあ。

「i-Cockpit」は思ったよりメーターパネルが奥にあるので視認性も特に良くない、そのくせウィンカーランプがメーターパネルの左右端の手前側にあって視認性が良くない(なぜメーターパネルに埋め込まないのか)。普通のクルマのメーターパネルに比べたら視認性は確かにいいかもしれないが、最近のクルマはBセグでもヘッドアップディスプレイがついててメーターパネル自体はほとんど見なくても十分だし。むろんプジョー208にはヘッドアップディスプレイなんてついてない。「i-Cockpit」があれば充分なんだろう。オレはそう思わないけど。

そんな訳でパッと見にはデジタルのスピード表示しか目に入らない。一応アナログ式表示のメーターもついてるんだが色のせいで非常に視認性が悪い(カスタマイズ可能らしい)。おかげで「タコメーターが逆回転で非常に気持ち悪い」という話だったのだが、そもそも見えづらいのであんまし気にはならなかった。

それよりデジタルのスピード表示の追従性が怪しいのが気になる。0.3秒に一回くらい更新する感じなんだけど、実測値はその2個くらい前じゃないのアレ? 特に減速時に顕著で「もう絶対10㎞/h切っててブレーキ踏み込んだらその場で止まりそう」な速度でもまだ20km/hとか出て違和感が半端ない。多分わざとやってる。ODBC2でECUから実測値引っ張りたい。

という訳で「見た目は良い」「内装も見た目は良い」「走りはかなり良い」「でも内装の使い勝手が正直良くない」「i-Cockpitとか死ねばいいと思う」という結論だった。素材は凄くいいのに創作料理屋が要らねえことしやがって感が凄い。「i-Cockpit」に関しては慣れたらすごく良いって人も居るらしいんだが、本当でござるか? オレ信じたくねえ。

しかしWebページを見ると内税240万円切ってて「安い」とか一瞬思うけど、それは一番安い「Style」グレードで、しかもこれ受注生産なんだよな。というか最初ディーラーの人にグレードを聞いたら「Allure」と「GT-LINE」の二つって言われて、「GT-LINE」にしか付かない安全装備が結構あって、それで「GT-LINE」は内税293万円。なんだかなー。

そんな訳で「なんかすげえ勿体ない」気分でディーラーを後にしたのであった。こうなったらフィットとかヤリスとか最新のBセグメントも試乗しないとダメかな。