[自動車]マツダ MX-30 EV MODEL 1dayモニター試乗体感 150kmほど走行レポート

マツダのサイトを見ていたら「MX-30 EV MODEL 1Dayモニター試乗体感」というのをやってる事に気づく。どうせ地元では対象外なんだろうと思って調べたら自宅からクルマで10分くらいのディーラーで取り扱ってる、マジか。募集要項を見たら条件を満たしている。こんな機会でもないとEVを長時間乗る機会なんて無さそう。よし応募したれ。

マツダ|MX-30 EV MODEL 1dayモニター試乗体感|ご購入サポート

数日してディーラーから「OKです、貸し出し時間は10:00~16:30になります」のお返事。「返却時には使用した分だけバッテリーを充電して下さい」とある、つまりは充電も体験出来る訳だ。調べたら結構あちこちにCHAdeMO充電器がある、これで30分くらい充電すれば大丈夫っぽい。日にちは第一希望の土曜日が取れた。どのくらい走れるか判らんけど小樽程度なら余裕で往復できそう。行こうと思ってた「小樽・札幌ゲーセン物語」展にはこいつで行くことにする。

当日にディーラーに移動。注意事項の書類にサインしたり話を聞いたり。この店での「1dayモニター試乗体感」の第一号らしい、マジか。さらに言うと用意された「MX-30 EV MODEL」はまだ走行距離が100kmとのバリバリの新車であった。いかんちょっと緊張してきた。

ロードスターをディーラーに鍵ごと預けて、MX-30に乗り込んでシート合わせ。とりあえず軽く運転してみる。普通に運転出来ますね。ただこの静かさとか滑らかさは普通ではない。ちょっと凄い。エンジンが存在しない事による「振動源が無い事のメリット」がなんとデカいことか。1㎞くらい走ってから適当な駐車場に入れてよく見てみる。グレードは最上位の「Highset」、まあ価格差を考えたらコレ一択だと思う。スタッドレスタイヤは残念だけど季節的に仕方がない。ちなみにFFモデルのみ。

外観上は小さな「ELECTRIC」シールとリアの「e-SKYACTIV」ロゴ以外マイルドハイブリッドモデルと見分けがつかない。マイルドハイブリッドモデルもリアのログは「e-SKYACTIV G」だから似てるし。

床下を覗くと確かに妙なでっぱり。これがバッテリーケースである。バッテリーは水冷構造のため長持ちするらしい、ちなみによく比較されるホンダeは空冷のみ。「デカいバッテリーを積んだらLCAが悪化する」という主張によりバッテリー容量は35.5kWhしかない。WLTCモードでの走行距離は256kmぽっちである。このバッテリーケースのせいで最低地上高が一気に180mmから130mmに下がってしまっている。ロードスターが140mmなのでそれより低い。冬に乗るなってことか。

メーターはマイルドハイブリッドモデルと同様「左右は物理メーター、真ん中は液晶メーター」という構成。右にバッテリー温度が付いてるのがちょっと面白い。左の「POWER」メーターの読み方が最初分からなかったのだが、左の青い部分に入ると回生が入っている状態。左に回るほど回生=バッテリー充電、右に回るほどパワーが出る=バッテリー負荷が高いという仕組み。慣れると分かりやすい。

さてバッテリー容量は現在98%となってるが、航続可能距離は218kmしかない。さらに空調をオンにすると一気に188kmに減る。マジか空調で一割持っていかれるのか。なんか心配なのと、そんなに寒くないので空調は切っておく。後で気づいたが空調オフでもシートヒーターとステアリングヒーターは使用可能。しかも航続距離は変わらない。シートヒーターは熱いくらいにめっちゃ効く。

にしても空調パネルがタッチパネルなのは本当意味が分からない。デザイナー曰く「ダイアルを付けたくなかった」というけども。使い勝手は悪くはないんだが運転中に操作したくない。センターコンソールも使い勝手は悪くないけど形が意味不明すぎる。アームレストの位置はすごい良いだけに惜しい。

ロードスターで使ってる音楽用USBメモリを刺して、さらにLightningケーブルも刺して手持ちのiPhoneを接続。クルマを始動してなくても充電されるんだコレ(多分ドアロックしたらOFF)。そして始動したら「CarPlay接続しますか?」と聞かれるので接続。地図アプリが自動で立ち上がるのでマイクアイコンを選択して行き先を音声入力すると一発認識。スマホナビの一番いいところって音声認識の精度だと思う。そして小樽まで移動開始。

それにしても静か、ロードノイズも抑えられててちょっとした高級車気分。乗り心地はいつものマツダ3/CX-30と基本同じだけど、車重が重たい&バッテリーを積むために車体剛性を上げているせいで最高とまでは行かないけど大分良くなってる。ステアリングはとても滑らか、特にSAT(コーナー立ち上がりでハンドルをまっすぐ戻す力)の出方が自然で素晴らしい、ロードスターより良いくらい。ロードスターは最後のまっすぐまで綺麗に戻り切らないのよな。

ブレーキを踏むとペダルから「ガリガリ…」という感触が来るのがちょっと気になる。これは回生ブレーキのせいだろうか。ブレーキ自体はコントローラブルだけど、このタッチもあってマツダ3/CX-30にはちょっと劣る。

動力性能は普通、EVというと「超絶レスポンスと踏んだ時の異様な加速感」ばっかし取り上げられるけど(これをエンターテイメントにして成功したのがテスラだと思ってる)、この「MX-30 EV MODEL」は「すごく良く出来たガソリン車」みたいな感じ。踏み込んでも唐突な加速はしない、人工的に作られたエンジンっぽい音ともになだらかに加速していく。体感的には2.5L~3LのNAくらいですかね。必要十分な程度には速いし怖くない。

アクセルレスポンスはとても良い。「すごく速い」という意味でなくて「自然かつ滑らか」という意味。ハーフスロットルからの加速の仕方は「理想的な内燃機関エンジン」みたいな感じで本当に気持ちいい。全てが過剰で無くてちょうど良い。

テスラとかのEVの全開加速って「バッテリーが一時的に出せる最大出力」を使ってるんだけど(当然その分バッテリーは減るし高出力は短時間しか出来ない)、そういうのを使ってない気はする。そもそも「全開にすると具合が悪くなる」くらいの猛烈な加速が必要かと言われたら「付いてたら一回試しに使ってみる」程度ではなかろうか。

ステアリングに小さめのパドルが付いてて、これで回生量を調整できる。上に二段階、下に二段階の切替が可能。下に切り替えてアクセルを離せばそこそこの減速Gが効いて、タウンスピードでの交差点前の減速はブレーキを使わずとも十分可能。新型ノートe-PowerのECOモードっぽい。逆に上にするとアクセルを離しても回生がかかりづらくなる、だけではなく実は「シフトアップしたみたいにクルマが前に出る」感覚がある。これが謎、一体どうやってるんだろう。良い感じだけど現在選択してる状態がメーターパネルにしか出ないのがちょっと残念。HUD側にも出して欲しい。

回生をきつめにしてアクセルを離せば結構ブレーキがかかるのに、ブレーキランプが光ってるかどうかわからないのは正直良くない。ハンドルの「INFO」ボタンを押すと液晶メーターの表示が変わって、車両を後方から見た絵もあるのでここで表示されるのかと思ったら何をやっても表示されてる車両にランプは点かなかった。新型レヴォーグも同様の表示があるんだけど、こっちは灯火類の点灯状態が表示状態に反映される。スバルの方が圧倒的に正しい。

ここからは素のMX-30に共通した部分。乗る前は「SUVクーペっぽい外観だけど着座位置はそんな高くないよな」と思ってたんだが(普段がロードスターなんでかなり麻痺しております)、思いのほか高くて見晴らしが非常に良い。CX-30と全然違わね?と思って調べたら全幅、全長は全く同じだけど全高は25mm違う。この25mmが効いてるんだろうか。CX-30は割と普通なんだけど。

ただし後方視界が絶望的。ドアミラーはデカくてよく見えるし、バックの時に自動的にちょっと下げる機構もついてて良い感じなんだが、ルームミラーは「ただでさえデカくないリアウィンドウの4割くらいがリアシートのヘッドレストに塞がれている」状況。後ろにクルマが来ても車種が分からないのは結構ストレス。このクルマで5人乗るというのはすごいレアケースだと思うので真ん中のヘッドレストは取り外した方が良さそう。リア左右のヘッドレストもコンパクトカーみたいに「使うときに引き出す方式」にしとけばいいと思うのだが。

ここまで後方視界がアレならカメラで撮影してモニタに映す「スマートミラー」を採用した方がいいのでは。ノートe-Powerの時はルームミラーまでの距離が近いのでピントが合わせづらい(年寄りですんで)というのが気になったけど、このクルマはルームミラーまでちょっと距離があるのでそこまで問題にならなさそう。

観音式ドアはやっぱり疑問。リアドアを開くにはフロントドアをかなり開く必要があって「駐車場で隣にクルマが居る状態」ではまず無理。開けた所で「ドアを閉める順番を間違えたらドアに傷が付く」という妙な不安感がある。実際にはまず間違えないだろうけど。そうなると後部座席に荷物を置いておくのも気軽に出来ないからトランクを使おうって話になるけど、パワーゲートの設定が無いのがまた致命的。兄弟車のCX-30にはパワーゲートの設定があるのに、デザイン上の問題でパワーゲート対応ダンパーが入れられなかったらしいけど、そこはもうちょっとなんとかしようよ。

走行中にMRCC(マツダ・レーダークルーズコントロール)とTCS(トラフィック&クルージングコントロール)を試す。前者はいわゆるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で、クルーズコントロールに前方走行車との追従が付いた奴。試すときっちり動作するし、停止状態まできっちり追従して、前の車が発進したらちょっとアクセルを踏むだけで再発進。これは楽ちん。トランスミッションが無いから加速・減速もきわめてスムース。

TCSはカメラで車線を検知してステアリングアシストを行うものだが、流石にカメラだけでやるのは色々無理がある印象。ごく緩いカーブなら使えるけどちょっと曲率が深くなったりすると特に戻し側が怪しい。大型車両が隣から追い抜くと勝手に反応してハンドルに反力が来るし。高速道路限定で使うもの、と言っても「無くてもいいかなあ」という気はする。

通常の車線検出機能はロードスターにもついてて、こっちはブザー音&警告表示しか出さないので結構検出が厳しいのだが(轍に溜まった水をセンターラインと誤判定したりする)、こっちはハンドルに反力が来る設定のせいか車線検出がかなり怪しい。空いてる道路で試したら綺麗に引いてあるセンターラインを跨いでるのに50%くらいの確率で動作したりしなかったりする。なんか色々と謎。後で設定を見ても標準設定のまんまっぽかったし。

駐車の際には360°アラウンドビューがめっちゃ便利。ハンドルを切るとガイドラインも曲がるけど、これが前進の時にも使えるのが想像以上に便利。ただビュー切替ボタンがハンドル右下のボタンが集中している部分で「見ないと押せない」のが本当に残念。そこはいっそハンドルにスイッチを付けてもいいと思うくらい。

オーディオはかなり良い。BOSEシステムがついてて、EVなので車内が静かな分余計に素晴らしい。ロードスターから持ってきたMP3のデータが完全に負けている。FLACに対応してるらしいのでCDを可逆圧縮で持ってくる方がよさそう。

ドアノブに鍵穴が無く隠れていて、アンロックはドアノブの内側を触って解除、ロックは外側の四角い部分を触るだけでロックされる。これはスマートで良い。ロードスターはロックもアンロックもボタンだし。

小樽での用事を済ませて、まだ航続可能距離と時間は残ってるので余市から赤井川を回って帰ることにする。よくドライブに使ってるコースなのです。にしても「スマホ版GoogleMap」、経路と予想時間は出るのに総距離だけ出ないのはなんの嫌がらせなのか、総距離だけが知りたいんだが。仕方がないのでブラウザからWeb版で調べる。こっちはスマホレイアウトでも総距離が出る、謎。

ここからは良く知ってる道なのでCarPlayを外して車載ナビの画面を見てみる。正直「カーナビに必要な画面」としてはマツダコネクト2のナビの方が全然出来が良い。特に行き先表示の青看板が全く同じ表記で出てくるのがとても良い。リアルで見るより良く見えるし。車速信号を使ってるのでGPSをロストしても安心、スマホナビと車載ナビは使い分けても良いと思う。北海道だと山の中で圏外になる事も珍しくないし。

余市から山道に入ると非常に気持ちがいい。車重は重いけどバッテリーの搭載位置が低いから低重心だし、e-GVC plusのせいか良く曲がる。一部で「トルクステアが出る」とか言われてるけどタイヤのせいか全然問題なし。何よりアクセルに対する追従性が非常に宜しい。

パドルによる回生量変更がかなり便利。「ATに良くついてるパドルシフトでしょ?」と思ってたのだが全然違う、こっちはトランスミッションじゃないから「どんな状態でも確実に、かつ瞬時に切り替えられる」のだ、ATのパドルシフトを実際に使った事がある人にはこの意味が非常にデカい事が分かると思う、特にダウンシフト時はエンジン回転数を十分に落としても入らなかったりするし。でもMX-30 EVのパドルはいつでもどこでも瞬時に切り替わる。気持ちいい。

ただ山道の登りに入ると、大してアクセルを踏み込んでなくても後続可能距離がガンガン減るのが心臓に悪い。これ要するに「今のペースだったらあと何km走れるよ」って意味なんだな。なので途中から見ないことにした。ついでに空調パネルをONにしたら確かに航続可能距離は減るけど、乗り始めの時より全然差が少ない(10㎞も違わない)のでONにすることに。一回車内が温まれば(冷えれば)そんなに食わないのでそこまでシビアになる必要はないと思う。

下り坂でずっと回生を使ってると、航続可能距離とバッテリー残り容量が増えるのが目で見える。面白い。EVってブレーキを踏まなくても回生が効くのだね。

ただ「思い切って走る」気には到底ならず。借り物というのもあるけど、重い車重&FF&スタッドレスタイヤだから「思ったより曲がる」と思っても「最終的に裏切られる」予感しかしない。車重は1,650kgもある。これはCX-5ディーゼルのFFモデルより重く、4WDモデルより軽いという車重である。CX-5の場合は「エンジンが重い」という違いはあるけど。MX-30はマイルドハイブリッドモデルでもFFで1,460kgだからもともと重たいのもある。

そんな訳で150kmほどのドライブを完了。バッテリー残りは32%。ということは走行可能距離は満充電で200kmくらいか。ディーラーの近くにあるスーパーにCHAdeMO充電器があると事前に調べてあったので行ってみる。一台分しか無いので不安だったが、駐車場がめちゃ広いスーパーだったので空いておりました。バックで止めてコードを引っ張って、って届かねえよ! おそらくは「ボンネットに給電ソケットがあるリーフ」に合わせてあるんだろうか。仕方ないので前入れ駐車に切り替えてコードを接続。給電口のゴム蓋を剥がしてソケットをかちりと差し込むだけ。

事前にインストールしておいたスマホの「エコQ電」というアプリからCHAdeMO充電器のQRコードを読み込ませて給電手続きをすればリモートで充電スタンバイ状態になるのだが、このアプリが非常に出来が良くない。といかアプリと言いつつWebKitを使ったガワだけのアプリである。そしてブラウザでも普通にアクセスできるWebサイトの出来が良くない。一回登録したのにID/パスワードが自動入力されないので泣きつつID/パスワードの問い合わせをしたらIDとパスワードが平文で届いてひっくり返る、ひどいなコレ。しかもJavaScriptで制限してるのかID・パスワード欄にコピーが出来ない。一文字ずつ確認して手入力する羽目に。

なんとかCHAdeMO充電器が充電スタンバイ状態になったので「START」ボタンを押せば充電開始。安心したのでスーパーのトイレに行ったり食料品売り場を眺めたり。充電中でもクルマの中に居る必要はないのです。とは言ってもCHAdeMO充電器の「STOP」ボタンを押されたら充電が止まる気がするけど。

んで車に戻ったら…あんまし充電進んでなくね? CHAdeMO充電器は「一回の利用で30分まで」という縛りがあるのだが、結局30分でバッテリー残量32%が62%の30%しか充電されなかった。充電代金は「スタンド毎に設定」とあるが、ここでは「5分以内は250円、以降は1分毎に50円」という設定。つまり30分で1,500円(外税)、ええと150km走ってバッテリーが66%減って、そこから30%充電して1,650円かかった。ハイオクガソリン相当としても燃料代がリッター10km/l切ってるぞおい。

時間も無いので電話でディーラーに事情を話して、そのままディーラーに直行して返却。最後の充電でせめて80%くらいまで充電されてればすっきりしたんだがなあ。

ディーラーにクルマを返却した後は今日一日の分を口頭で伝える。結論としては「モーター走行は素晴らしい」「リチウムイオンバッテリーはダメ」という予想通りの内容。「EVに特化した内容」ではなく「理想とする乗り味をEVで実現した」セッティングは非常に好感が持てる、けど一般受けはしないよなあ。マツダも売れるとは思ってないんだろうけど。

本来なら「SKYACTIV-X」が目指しているのはこういう出力特性なんだろう、という予測は付く。本当にこのくらいのレスポンスとパワーがあれば今の価格差でもSKYACTIV-Xを買いますよオレは。ただ一般には理解されそうもない、現状「ディーゼルより重い」のが一番の問題なんだよねえ。3L版が本命だと思う。

エンジンルームを見るのを忘れていたので開けてもらう。写真で見た通り右側に盛大な隙間、ここにレンジエクステンダーエンジンが入るらしいがどうなるんだろう。エンジンを入れたら振動で色々台無しになりそうな気もする。ディーラーの人はロータリーエンジンのメンテナンス性に関して非常に厳しい見方をしており「止めて欲しい」というニュアンスを感じた。まあたった5万㎞でオーバーホールが必要なエンジンだしな。一定負荷で回すエクステンダーエンジンだったら条件が変わりそうだけども。

ちなみにロータリーエンジンをエクステンダーエンジンにする場合、ガソリン以外の燃料(軽油とかバイオ燃料とか)も十分可能性があるらしい。灯油を入れたら脱税になるんですかねコレ? 法整備上はそこまで追いついてない気が。

そして鍵を返してもらって自分のロードスターに乗り込む。うわ着座位置が低い! エンジンかけるとすげえ振動&うるさい! なんか爆発してる感じがすごい!

EVの後だとロードスターがすげえ野蛮な乗り物に感じる。それはそれで面白い。これが今日一番の感動かもしれない。

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