なんかやたら絶賛されてるし、以前乗った前期型「ノート e-Power NISMO S」の記憶が鮮烈だったのもあって気にはなっていた。4WDモデルは来月発売らしいが、とりあえず路面のアスファルトが見える程度に溶けたので自宅近くの日産に行ってみる。
日産:ノート [ NOTE ] 電気自動車 (e-POWER)
展示車を見た感想は「思ったよりずっとちっこい」「内装思ったよりショボい」つう感じ。内装は写真や動画で見るとすごく良い感じに見えるんだけど、実際はかなりプラスチッキーな印象。このデザインならソフトパッドにしてステッチ入れて、とかやらないとダメなんじゃないかと思うけど。デザインと実際の質感が合ってない印象。例の液晶メーターパネルが何も映ってないとすごい安っぽいし。
全体的に四角なのでサイズの割には広いし荷物も積めそう。だけどリアゲートを開けるときに思ったよりリアゲートが手前側に飛び出すのには面食らった。開けた本人が下がらないとダメ、壁ギリギリに駐車したらリアゲート開けられなさそう。後席はまあ普通、ヤリスよりは広いけどフィットよりは狭い? 長時間はつらそう。
免許証のコピーを取ってもらって試乗もしてみる。ドラポジが微妙に合わないというよりは若干ペダル位置がオフセットしてるのかなコレ。とりあえず発進しようと思ったらATシフトの操作方法が分からない。「横のボタンを押して手前側に引っ張ればドライブ、奥に押し込めばバック、上についてるボタンを押せばパーキング」であった。言わなきゃ分からないのはどうかと思う。ヤリスやFITの安っぽいストレートゲート、アレはアレで「バカでもわかる」メリットがあったのだなあ。
ディーラーの人に試乗コースを聞いて発進、以前のe-Powerと違って今回はクリープが付いております、ので恐る恐るアクセルを踏む事なしにリラックスして発進可能。電動パーキングブレーキにオートホールドもついてるので実質クリープは無効に出来るけど、オートホールドはデフォルトでOFF(エンジンかける度に再設定)とのこと。どのメーカーもそうなのかなコレ。
ゆっくり走り出す。いいですねコレ。乗り心地がとてもいい、ちょっとした凸凹くらいなら「床下でなんか揺れてる」程度にしか感じない。ステアリング周りの剛性ばっちり。ただホイールベースが短いせいなのか、大きめのギャップを拾うと盛大に車体が揺れるのが気になる。普段が全然揺れない分ビックリするし、頭が前後に揺すられるから余計に。シャーシは現行プジョー208、ルノールーテシアと共通だと思うんだけど、そういわれると確かに似てる感じはする。
肝心のe-Powerはいい意味で普通、「とてもよくできたエンジン車」みたいな感じで「NISMO S」みたいな「EVちょうすごい」みたいな感じはしない。これは「NISMO S」が異常なだけか。ただ旧型ノートと違ってエンジンがかかっても遠くで「ポー」って鳴ってるみたいな感じでうるさく無い。ワンペダルドライブは廃止されたけど、ドライブモードをECOにすればアクセルの戻しでそれなりにブレーキがかかるので、法定速度で走れば交差点前のブレーキくらいなら行ける。完全に停止しない限りはワンペダル走行は出来そう。
ドライブモードを「スポーツ」にしてアクセルをちょっと踏み込むと結構速い、ここら辺はさすがEV。ただヤリスHVも同じくらい速かった気はするけども。CVTじゃないのでラバーバンドフィールも皆無。いいです。
ただ気になる所はあって、とかくメーターが読みづらい。具体的に言うと位置が下過ぎて「前方注視しながらメーター読み」がかなりつらい。あのメーターパネルは全面液晶パネルじゃなくて上1/5くらいは警告灯がずらっと並んでる。LCDパネルが死んでも警告灯は光るのでそれはセーフティとして正しいのだが、だとしても警告灯は下にしてメーターLCDは上に寄せないか? メータパネルデザインも良くない。ドライブモード切替もいちいちLCDに出るんだけど、三種類しかないから出す必要なくない? ちなみにHUDはメーカーオプションでも存在しない、個人的にはかなりつらい。
ルームミラーは日産お得意の「後部カメラ+液晶パネル」方式、旧型ノートにもついてたけど解像度がかなり上がった感がする。のは良いんだけど、実際使ってみると「前方注視しながら液晶モニタを見るとピントが合わない」のなコレ。いや若い人なら問題なさそうだけどオレはちょっと慣れるまでかかった。通常の鏡にも切り替えは出来るけども。
そんな訳でペダルレイアウトがちょっとズレてる感じはするし、視点をまっすぐ固定して運転出来ないしでなんか色々ちぐはぐ感がある。テストコースのテスト走行だけで作っちゃったみたいな感じ? そして例によってなぜかハンドル形状がD型である。だからハンドルを持ち変える必要があるステアリング比ならハンドルはちゃんと丸にしとけよ。まだ許せる程度だったけど。
試乗コースを一周してディーラーに戻って駐車も自分で試す。アラウンドビューモニターが付いてるし、車体も小さいので楽勝。
結論としては「走りそのものはとてもいいけど、ドライバーUIとして色々合わないのがもったいない」という印象。さらに内装が思ったよりショボくて、正直コレでプロパイロット付けたら300万オーバーと言われても正直納得しがたい。いやFITもヤリスもハイブリッドモデルは250万円を超えちゃうのでやっぱり高いとは思うんだが。
あと旧型ノートの「e-Power NISMO S」のダイレクトパワーっぷりを期待すると完全に肩透かし、ああいうとんがったバージョンは出さないんだろうか。正直アレを知ってしまうと素のe-Powerはちょっと物足りない。もっとEVっぽくしても良いのに。
そんな訳でうーん、という顔をしていたらカタログを渡されて「またどうぞ」と言われてしまった。商談する気皆無。ちなみに「4WDモデルの試乗車は入るんですか?」って聞いたら「その予定はございません」ときっぱり言われてしまう。大丈夫か日産。
帰宅して色々考える、正直ちょっと期待してただけにがっかり感が結構ある。改めて考えたらあの小さい車体を走らせるためのバッテリーを充電するのに1.2Lの3気筒エンジンが必要とか割と絶望しない? そのエンジンで普通に走らね? いやe-Powerの方が燃費は良いんだろうけど、バッテリーの分重いだろうし。せめて発電用エンジンが660ccくらいだったら「EVって効率いいよね」って話になると思うんだが。
あとノートもフィットe:HEVもそうだけど、全開加速を2回やっただけでバッテリー容量が減ってるのが見えるので、ミニサーキットとか全開一周出来なさそう。と思って調べたら旧型ノートe-Powerでは筑波でも全開で一周持たないらしい、まあ普段使う分には問題ないけど、北海道みたいに「ハイペースで走れる峠道が延々と30分以上続く」ような道をガチで走ると途中で制限モード入りそう。法定速度は守ろう。
「e-POWER NISMO 2000km超えました」あどのブログ | R35specVとC43 WAGONな生活 – みんカラ
ちなみに今回のノート、e-Powerしかないので最低でも車両本体価格が200万円超えとちと高い。なので「ノートの安価なグレードを乗ってた人」の受け口が「マーチしかない」という悲惨な事に。ちょっと待て現行マーチは先代ノートより古いクルマだぞ。さらに言うと「ティーダのサイズを好んで乗ってた人」が「代わりに乗るちょうどいいクルマ」が無くて困ってるらしい。ノートじゃ小さすぎるらしい。
その後も色々調べたけど、やっぱりEVで長距離走らせるならトランスミッション必須っぽいのね。高速巡行時のエネルギー効率がめっちゃ悪いからねえ。
ポルシェのEV「タイカン」の革新は、「2速トランスミッション」にあり | WIRED.jp
あとはフライホイールもそのうち付きそう。発進時には要らないから、一定速度巡行時に有効になるようにクラッチ付きとか。むろん現在は存在しないからこれから作るのだ。
EVってバッテリー以外にもまだやることは山積みじゃないのかなあ。そしてそういった「やるべきこと」をやろうとしているメーカーは結構少なかったりする。この過渡期はあと10年じゃ終わらないと思う。