先日アニメの放送が終わったこの作品。原作の二巻「天使は結果オーライ」までがアニメ化される、ってのが最初の方で読めたのでそこまでは速攻読んだのだが、残り一巻の「私と月につきあって」を先日の出張を利用してようやっと読破したので今更レビュー。それにしてもアニメ版、再放送してくれないかなぁ…。最初の二話がキャプ失敗してるのよ。
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宇宙と危険と魅力
宇宙が少し楽しくなるかも
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少年少女諸君、これがハードSFの醍醐味って奴だ
むずかしめの最終作
元々はオリジナル版(イラストが山内則康版)の一巻が出た頃に友人に貸して貰って、ラノベなのに内容がきちんとハードSFして面白いのに相当感激した記憶がある、しかし山内則康氏のイラストでは主人公がむちむちぱっつんばでぃなのでなんか内容と合ってなかった…。二巻、三巻は出てる事すら知らなかった(知ってたら買ってた)
倫理的にぶっ飛んではいるが物理的には全くOKな話である。そもそも宇宙飛行なんて物理運動の話だからコレでいいのだ。あさりよしとおの名著「なつのロケット」と同じ。人間が耐えうるならやってやれない事は無い。「なつのロケット」も激しくオススメしとく。
あさり よしとお
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話をロケットガールに戻して、かなりの紆余曲折があった(5年くらいかかってね?)アニメ化にあたり見てみたら結構面白い。ので原作を読み直してみる&全巻揃えてみようと。読んでみたらこれがすんげー面白い。特に二巻の「天使は結果オーライ」は最後の運はともかく、内容的には一番好きな作品。茜が健気で色々泣ける。「私と月につきあって」も良かった(惜しむべくはSSAの個性溢れるスタッフがほとんど出てこない事、何人か技術者を派遣すべきじゃないのか?)、しかしこの最終巻、途中のミッション変更はシラクなら許すだろうけど、サルコジだと激怒しそうなイメージがあるのはオレだけか?(汗
で、原作を見直してからアニメ版を見ると色々と描写がヌルい事に気づいたり、アニメ版より小説版の設定の方がずっと無理がない。まぁ1クールという制限もあったし、その中では良くやったとは思いますけどね。個人的には心理描写が実にタフかつシビアな小説版の方が好きかも。二巻冒頭での「森田家家族三人が衛星回線で初会話」なんて実にいい。
モータースポーツなんかでもそうだけど、基本的にメカが人間の生死に大きく関わるような奴は「メカは最善を尽くす、パイロットはそれを信じる、死んでも恨みっこ無し」ってな部分があるのだけど、その辺りは小説版の方がずっと良く表現出来てる。アニメ版でも最終話の最後でちょっぴりやってたけど、あれがスポンサー付きアニメでやれる限界なのかもなぁ。詳しく書いちゃうとネタバレになっちゃうので書けんが。
#余談だが「ライトスタッフ」で有名なチャック・イエーガー、映画では格好いいけど自伝では「みんなが頑張って自分もうまく対処出来た。さんざん勉強と訓練をした甲斐があった」みたいな話になってて「素質」や「才能」というよりは100%努力の固まりだったりする。現実の方があんがい地味だったりするのだな。ガガーリンやアポロなんかも「90%の努力と10%の運」みたいな話だと思う。
新装版はイラストがむっちりむうにぃ氏に変わって、三人のキャラ描写は原作に近くなって違和感が減った。その代り那須田(オリジナル版の発表当時はNASDAがまだあったのだな…)の描写と合わなくなってたりするが、まぁこの辺は愛嬌か、ラノベだしー。有り得ないスリーサイズやBMI云々の話もファンタジーですよ、きっと。
ご都合主義的な部分はあるけど、「ラノベでハードSFなんて」と言ってる人も、「ハードSFは難しそう」なんて思ってる人にも読んで貰いたい良書。NASAも帰還型シャトルが退役して再利用型オービターに変わる時代だしね。実際にはNASAの施設も結構ボロボロらしいが、なにせ未だにサターンV用のメンテナンスコネクタが放置されてる位で…。
ついでに書いておくと「MOONLIGHT MILE」も先日放送が終わったのだが、こっちはさらに内容詰め込み過ぎでかなりアレな出来に。作画や動画という観点から純粋にアニメ作品として見てもあんまし褒められないし、かなり残念ではある。(とか言いつつ1440×810の音声5.1chで全部エンコしてたり)コミック版で科学考証がおかしかった部分に修正入ってるのだけはいいんだけどね。