最近はBEV(Battery Electric Vehicle、要するに電池のみで駆動する自動車)が流行ってきてるけど、従来からある「充電に時間がかかる」「航続距離が短い」という問題が解決されたわけではない。
たまに「バッテリーを共通化して交換式にすれば普及する!」っていう人がいるけど、なんでそれをやれないのかの理由も考えた方が良いと思う。分からない? じゃあオレなりに考えた理由。
- バッテリーが重過ぎる、リーフで言うと通常モデル(WLTC航続距離322㎞)で300㎏、e+(WLTC航続距離458km)で440kgもある。実に車両重量の20~25%がバッテリー。なおガソリンの比重は0.74弱なので50L入れても40kg無い。水素だと満タンでも数㎏程度
- リチウムイオンバッテリーは衝撃に極めて弱いため現在のBEVはほぼ「床下を格子状構造にしてそこにバッテリーを埋め込む」形式にしている。こうしないと衝突時(特に側面)の安全対策が取れない、床を格子状構造にするので副作用としてシャーシ剛性がめっちゃ上がる。同時に重量も重くなるけどバッテリーのが重いから無視してる。車重は重いけど重心が低くて剛性も上がるので乗り味は良くなる。そしてみんなBEVを絶賛する
- 一部のBEVはバッテリーの温度監視のためにバッテリーの冷却、保温を行ってる(テスラがエアコンによる空冷、アウディe-Tronが水冷、つまり放置しててもバッテリーが減る)、このためバッテリーの装着・脱着が困難
- バッテリーモジュールは複数積むことになるが接点抵抗がバカにならないのでごっついケーブルとターミナルで接続されている、交換式バッテリーみたいに板バネ接点とかやったら損失が半端ないことになる(多分致命的なレベルで熱が出る)
- バッテリー自体ガンガン進化してる途中で、この後に全個体電池も控えてるので「モジュールの標準規格」とか時期尚早すぎる。ちなみに全個体電池になると容積辺り効率と重量とか色々と以前されるけど、ジャンプアップというほどでもない
これまんま「今どきのバッテリー駆動機器はなんでバッテリー交換出来ないようにしてあるのか」って話と同じなんだよな。カメラとかはバッテリー容量が少ないのでまだまだ交換式でいけるけど。
以前「グランド・ツアー」でバッテリー交換式のBEVフォーミュラが出てたけど、交換は専用のスタッフと機器(というかトレーラー)が必要で数十分かかる。そういうもんだと思う。
中国のタクシー会社でバッテリー交換式やってるよ、って話もあるけど、前述の問題点は一切解決出来てる訳ではない。アレはたぶん「バッテリーモジュールが小容量」「安全面はちょっと疑問」だと思う。当面のつなぎにはいいけど、長期間は無理だろうなあ。
ここまで書いておいてなんだけどBEV自体は嫌いではないのです。アクセルレスポンスとか内燃機関では物理的に絶対に実現不可能な応答性だし。でも現状一般への普及は無理、今の内燃機関自動車をBEVに置き換えたら発電量が全然足りないというオチが待ってる。