ATARI Major Havoc Machine(TEMPEST Conversion Ver.)

そろそろ書きます、先日自宅に搬入した「Major Havoc」筐体のネタ。

この筐体は「TEMPEST」筐体から改造されたモノです。この個体は1984年に十数台が日本に輸入(船舶コンテナ一個分?)されて、何故かロケ稼働せずに個人向けに販売されたうちの一台です。「TEMPEST」筐体からの改造キットはATARIが販売してたんですが、これらの筐体に関しては在庫分をATARI自らが改造して出荷したんじゃないのかな、と勝手に思ってます。

なので電源は100V/60Hz仕様で(50Hzでも動く)、コインシューターは100円仕様なのです。

この「十数台輸入されてロケ稼働しなかった筐体」に関してはオレも詳しくないし某氏が某所で書くかも、ということなので書かないでおきます。ただ昔2ちゃんの某板で、とある著名なハイスコアラーが「昔TEMPEST改造筐体を持ってたけど実家に置きっぱなしにしてたら捨てられた」って書いてた奴、アレがこの中の1台って事は書いておきます。その某氏経由に聞いたから間違いないw

購入したものとは別の1台は数年前「パックマン展」で上京した時に某氏のガレージで拝見してまして、その時に「xx万で買わない?」とか言われて相当悩みました、しかし設置場所が確保できずに結局スルー。その代わりに遊びまくって「Major Havoc面白え!」って目覚めるきっかけにもなりました。こっちの筐体の方がオリジナル筐体より先に触ってるんですね。オリジナル筐体なんてKinacoさん所有のしか見たことも触った事ないんです。アレがどれだけレアだと思って。

さて時は流れてついにマンションを買ってしまったワタクシ。一人で暮らすには無駄に広いので筐体の一台くらい置いても問題は無さそう。そんな事で悶々とはしてたんですが、ある日に突然所有者とのコンタクトが出来てしまいました。縁ってヤツです。

そんな事で某氏を間に立てて交渉。無事購入となりました。搬入に関してはその道のプロである某氏にちゃんと依頼して一通りのメンテナンスを実施。オマケに「札幌に別の筐体を引き取りに行くついでに持って行きます」という事で輸送費も随分お安くして頂きました。有り難い。

さて購入した筐体、これは前述の通りにロケ稼働は一切行っていません、さらに言うとワンオーナー所有でずっと屋内保存されたものです。ついでに言うとあんまし使って無かったっぽいです。なんという好コンディション。

久々に電源を入れたらモニタのヒューズが飛んだらしいですが、色々調べて問題ないのでヒューズを入替えたら普通に遊べたとの事。まあヒューズも経年劣化しますしね。

これを某氏のガレージに運び入れて一通りの整備・清掃を行ってもらいました。具体的には清掃、一通りの状態チェック、全ての電解コンデンサの交換(ReCap)、コンタクトピンの清掃、モニタ基板の電源改造(壊れやすいので代替品交換が定番になってる)などです。基本的に程度は「非常に良好」との事でした。ただし一部に難あり、これは後述します。

そしてスケジュールを合わせて11月中旬にようやく搬入です。もうちょい遅かったら雪が積もり始めるので割とギリギリでした。会社には「大型家具の搬入」という事で有休を取りました、嘘は言ってません。

某氏がクルマに筐体を乗せて到着したのが夕方、そこから自宅の部屋まで搬入。ちなみにうちのマンションはほぼ段差・階段が存在しないので搬入自体はまだ楽な方だったと思います。

ただそれを差っ引いても筐体のデカい事。いや正確に言ったら幅はそこまででもないんですが(セガのアストロとかブラストの方が幅広い)、奥行きが大きくてですね…。あと最初は「設置は裏蓋を壁に付けて、メンテナンス時は移動して裏蓋開けて」とか考えてましたが、想像以上の重さで無理と判断したので部屋の壁に横付けして前後をフリーアクセスにしました。場所は取りますがメンテは非常に楽ではあります。

そして電源投入。ここでモニタの程度が異様にいい事にビックリします。いやマジで新品みたいなんすよ。焼け皆無のフォーカスもバッチリです。素晴らしい。操作系も完璧。凄い。筐体の一部にスレ、塗装の剥がれがありますがココは仕方がないでしょう。

ただ多少問題がいくつか。まずは電源・レギュレータボードの一部電解コンデンサの代替品入手が間に合わなかった事。基板の音声不良(一部Chが鳴ってないみたいな音) モニタの左右端が歪んでる事です。

しかしここに基板は「元から筐体についてきた1枚」「某氏が持ち込んだ手持ちの1枚」「オレの手持ちの2枚(1枚は予備)」と、少なくとも動作確認済みのが4枚あります。凄いw

別の基板を筐体に入れてみると音はちゃんと鳴ります、って事は基板の音声不良はチップセレクタTTLかオペアンプと判断、部品があればすぐ治るでしょう。問題はモニタの左右端が歪む事。せっかくのキレイなモニタなのにコレがどうやっても治せない。

回路図とにらめっこして、おそらくは(改造内容に含まれてる)左右のクリッピングをしてるツェナーダイオードがヘタれてるんじゃね? という所で時間切れ、本日の搬入は終わりました。ここまで格安でやってもらったし、部品は後で送るというので後はオレが頑張る番です。

そんな訳でとりあえず設置が完了した状態がコレです。男前です。

12月中旬にようやく部品が到着。基板の音声側はあっさり治りました。しかしホムセンで1/4inchなソケットを買ってまで外したモニタ基板のクリッピング用ツェナーダイオードを交換してもモニタ左右端の歪が全く改善されません。ちょっと心が折れかけます。

やらなければ何事も進まないので背面ドアを開けてどうにかします。

そもそもATARIの古い筐体は「基板を真後ろから搬入」する上に、ベクタースキャン系だと画面の微調整を基板上でやる必要があります。正直一人だとかなり無理があります。色々考えてたら「VectorVGA」という、ATARIカラーベクタースキャンの出力をアナログSVGA D-SUB出力に変換するアダプタを持ってることを思い出しました。今悪戦苦闘してる「Quantum」の製作にも活躍してる奴です。

幸いアナログVGAケーブルの長さに余裕はあったので簡単につながりました。そしてVectorVGAで見てみると…こっちでも左右端が歪んでます。ってことはベクターモニタ側で歪んでる訳じゃないって事です。なんという。

色々と調べてみた所、画面調整用半固定抵抗の一個が壊れてることに気づきました。値が全然リニアに変わらないどころか指で基板をはじいても画面がおかしくなる始末。半固定抵抗も経年劣化に弱い製品です。そんな訳で半固定抵抗一式を通販で購入しました。

半固定抵抗が届いたらさっそく交換。そして調整してみたら…左右の歪が治る! という事でビンゴでありました。その後正しいモニタに繋ぎ直して、姿見を持ってきて鏡を見ながら気合でモニタの調整をしました。完璧です。

ついでにタッチアップ塗料で筐体のスレ、塗装ハゲも修復し、見た目も随分綺麗になりました。そんな訳で完成です。感動です…。

タッチアップしてもあんまし写真写りは変わらんのですけどね。

しばらくローラーコントローラで遊んでたので、未だにスピナーに慣れてません。どっちが良いかと言うと「どっちにも良いところと悪い所がある」というのが持論です。

ローラーコントローラは「直感的な操作が出来る」「左右の切り返しが早い」のが利点です、問題は「構造上回転抜けが発生するのでとっさの移動に弱い」辺りです。スピナーは「ローラーコントローラより精密な操作が出来る」のが利点で、問題は「左右の切り返しに物理的慣性が強くかかる」辺りです。要するに慣れ、です。

ここで筐体の詳細です。前述したとおりにTEMPEST筐体を改造したものです。なぜか改造キットにサイドアートだけは用意されてなかったので「TEMPEST」のまんまです、現在は有志が専用のサイドアートをデザインして販売してたりします。

筐体の改造内容は結構大掛かりで、まずモニタを縦マウントから横マウントに変更、背面にACファンを追加。コンパネ・マーキーのシールの貼り替え。モニタ基板の改造(安全策のため)など。

基板は2ndロットのシルク印刷が「MAJOR HAVOC」になってパターンが修正された奴。ちなみに純正筐体に入ってる1stロットはシルク印刷が「TOLIAN WEB(スタトレが元ネタ?)」という製作中コードで、ジャンパも結構な量が飛んでおります。壊れたら治すの相当大変そう。

さらにこの基板はオリジナルに比べて音源チップが「Quad Pokey(POKEYチップのコアを4つ40ピンDIPに内蔵、音源のみ使用)」から「Quad Pokey Eliminator(オリジナルのPOKEYチップを4個使ってQuad Pokey相当にする子亀基板)」になってます。多分コストの関係。ちなみに「Quad Pokey」は「STAR WARS Return of JEDI」及び「FIRE FOX」にも使ってます。

オリジナルの操作はローラーコントローラですが、こちらの筐体は「TEMPEST」のスピナーをそのまま使います。入力自体はただのDIR/CLK方式なので流用が効きますがカウンタ数が全然違います。なので2ndロットの基板からはカウンタ入力に使うカスタムTTL「LETA」のRESOLピンのプルアップ抵抗が増えてます。ここをプルアップすることで倍カウント対応になりスピナーでの操作が可能になります。

しかし入手した基板は何故かここのプルアップがされてませんでした。その結果スピナーで回す量が倍になりまともにプレイできない状態です。正直着陸シーンからしてかなり無理ゲーです、本当にこれで遊んでたんですかね?

筐体内部のワイヤーハーネスは「TEMPEST」筐体のままです。そのままでは「Major Havoc」筐体には接続できないので(ピン数も違う)、変換用の「Conversion Board」というのを介します。

オリジナルの「Major Havoc」筐体に搭載されたベクターモニタは「Amplifone’19」というモノで、「TEMPEST」筐体に搭載されている「WG6100」より高解像度・高速度・高輝度がウリです。ついでに「WG6100」はピンクッション歪みがあって、これをゲーム基板側で補正する必要がありますが、「Amplifone’19」からは不要になりました。

余談ですが「Amplifone’19」は製造過程の問題で非常に故障が多く、現存数が多くありません。元々「Amplifone’19」が入ってた筐体の多くが「WG6100」に換装されています、Kinacoさん所有の「Major Havoc」筐体もそうです。ちなみに「TEMPEST」筐体に「Amplifone’19」モニタは奥行きの問題で入りません。

しかし「Major Havoc」基板にはピンクッション歪みの補正回路がありません、なのでこの補正回路も「Conversion Board」に付いてます。あとローラーを点滅させるためのLIGHT信号は電球のためそのまま5Vがかかってるので、そのまま「TEMPEST」筐体のスタートボタンLEDに入れるとLEDが死にます、なのでそこの印加抵抗も付いてます。

で、今回死んでた半固定抵抗が「Conversion Board」についてた「X LIN」だったりします。なるほど。

さらに2ndロットの「Major Havoc」基板はクロックダウンがされています。クロックアップではありません。そのためゲームスピードが明らかに違います。ついでに言うと音楽の演奏テンポまで遅くなります。

オリジナルはメインクロック:12.09MHz、ベクター描画回路:10MHzですが、今回のはメインクロック:10MHz、ベクター描画回路:8MHzになっていました。調べる限りでは2ndロット基板のクロックは複数あるらしいです、がオリジナルより遅いのは間違いないです。

遅くした理由に関しては「モニタの描画速度がオリジナルより遅いから」という話でしたが、実際にオリジナルクロックにしてみても描画速度は全然問題なく、むしろオリジナルクロックじゃないと遅すぎて画面のチラツキが増えるという始末です。

このクロック問題に関しては「ゲーム難易度を落とすため」というのが某氏の見解です。個人的にもそう思います。それだけ難しいんですこのゲームは。

そんな訳でクロックもオリジナル準拠に戻してます。こっちのが絶対快適にプレイ出来ますって。

今後は筐体の改造を予定してます。うちのATARIベクタースキャン基板はMolexの中継コネクタを駆使してハーネスの入替えが簡単に出来るようになってるので、筐体のハーネスもそうする予定です。コントローラの問題はありますが、既存の5ボタンコンパネだったらコンパネの上にそのまま置いても問題ないのを確認してます。筐体で「GRAVITAR」が遊びたい!

さらにもうちょっと言うと、やっぱりコンパネ自体も改造したいです。「TEMPEST」筐体のコンパネはかなり凝った作りで同じものを作るのは極めて困難ですが(やった人は居る)。見栄えを気にせずに(ロケ稼働するわけでもないので隙間とかあっても問題なし)1枚板を貼り付ける程度なら割とどうにかなりそうで思案中です。

オリジナルのコンパネはちゃんと残す前提で、個人的にはやっぱりローラーコントローラにしたいのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です